衆院長崎4区補選 立候補表明の金子、末次両氏 既に臨戦態勢 与野党一騎打ちの構図か

 現職の死去に伴う衆院長崎4区補選(10月10日告示、同22日投開票)まで2カ月を切った。今のところ、自民新人で元会社員の金子容三氏(40)と立憲民主比例九州現職の末次精一氏(60)が立候補を表明し、与野党一騎打ちの構図が固まりつつある。両氏は街頭演説や企業・団体回り、集会などを精力的にこなし、既に臨戦態勢。ともに挙党態勢を築いて戦えるかが選挙戦の鍵を握りそうだ。
 25日、佐世保市のアルカスSASEBO。金子氏の集会は立ち見が出るほど盛況だった。党の選挙を取り仕切る森山裕選対委員長が党本部から駆けつけ「一番の武器は若さ。これから成長していけば間違いなくこの国の指導者になれる」と金子氏を持ち上げた。
 知事や農林水産相を務めた金子原二郎氏の長男。公認候補となる新長崎3区の選挙区支部長に決まるや「まずは取れそうな票を確実に取る」(陣営)戦略で企業・団体を回り、足場固めを急いでいる。容三氏は「まだまだ回り切れていない。一人でも多くの人と対話したい」と語る。
 情勢は順風とはいえない。補選は政権の中間評価と位置付けられる中、岸田内閣の支持率は低迷。大票田佐世保市での票の積み上げは、公認争いした県議や市議団らとの連携が欠かせないが「顔は出すけど汗はかかない」と静観をにおわせる議員も少なくない。これまで街頭にあまり立っておらず、無党派へのアピールが足りないと指摘する声もある。
 そして陣営が最も警戒するのは一騎打ちの構図。総合選対本部長の山本啓介参院議員は「一対一は厳しい戦いになる」とみる。
 2022年7月の山本氏自身の選挙は全県区で26万1554票を獲得。一方、5人が出馬した野党系候補の票を合わせると26万801票と肉薄する。4区内では佐世保市や北松佐々町で得票が下回った。選対支部長の一人は「野党が結集した場合、勝敗は分からない」と険しい表情を見せる。

 「末次君は私の最も近しい友人。今度こそは小選挙区で当選させていただきたい」。23日夜、北松佐々町であった末次氏の国政報告会。師と仰ぐ小沢一郎衆院議員がビデオメッセージを寄せ、支援者はその熱弁ぶりに食い入るようにテレビモニターを見詰めた。
 21年10月の前回衆院選では自民候補に391票差で敗れたものの、比例復活で初当選。共産を含めた野党共闘が一定機能した。国政報告会は佐々町を皮切りに松浦、西海両市などでも実施。「自分にはこれしかない」と佐世保市中心部などで額に汗しながら街頭に立ち「長崎から政治を変える。利権政治を終わらせる」と訴えている。
 今回の補選も票の積み上げには連合長崎との連携や野党共闘が欠かせない。だが関係者の間では「行事には顔を出さず、衆院選後の交流もほとんどない。現職の強みはない」(社民市議)との不満が漏れ、前回並みに機能するのかは見通せない。
 3月、連合長崎は末次氏や立民県連に当選後の知事選や参院選で具体的活動が見えなかったとして「このままでは次期衆院選で推薦できない」とする文書を提出。国政報告会の開催や意見交換の場の設定などを提言した。
 その後の話し合いで今月24日には推薦を決めたものの、連合長崎の髙藤義弘会長は今後の活動のやり方、進め方に「しっかりくぎを刺すよう事務局長に言っておいた」と目を光らせる。

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