シロアリの王と女王の特別食「ロイヤルフード」を初解明 京都大 その成分とは

ヤマトシロアリ。黒ずんだ色の2匹のうち、小さな方の個体が「王」、下は産卵を控えて腹部を膨らませた「女王」(松浦教授提供)

 シロアリの集団内で繁殖を担う「王」と「女王」の特別食「ロイヤルフード」の成分を明らかにした、と京都大などのチームが発表した。長寿を誇る王と、大量に産卵する女王の活力は謎に包まれていたが、人間の健康に役立つ成分も多く含まれ、ミツバチのロイヤルゼリーのように機能性食品への応用が期待できるという。米国際学術誌にこのほど掲載された。

 シロアリは地中に約40万匹がコロニーをつくり、分業して集団生活を送る「社会性昆虫」。オスの王とメスの女王の両方が存在し、繁殖に専念する。王はヒト並みの70年以上の長寿を誇り、女王は単独で増殖した約200匹が1日当たり計7千個も産卵する。ただ、その活力として何を食べているかは謎だった。

 京大農学研究科の松浦健二教授(昆虫生態学)らの研究チームは、日本全域に生息するヤマトシロアリの王と女王を野外で採集し、地中の行動を観察しやすい多層に分解できる形状のガラス製容器で飼育。王と女王は働きアリのように樹木を食べておらず、働きアリが王と女王に口移しで餌を与えていることが分かった。

 そこで、働きアリが与えようとする直前の餌を採取し、同時に王と女王の腸の内容物も分析したところ、ヒトの健康に役立つ機能性成分が多く含まれていた。善玉コレステロールの上昇効果があるリン脂質などが共通して見つかり、王だけにスフィンゴ脂質、女王だけにジアシルグリセロールと、異なる複数の脂質成分も確認された。

 一般的に生物は活動的であるほど寿命は短い傾向にあるが、社会性昆虫は旺盛な繁殖力と長寿を両立させている点が特徴。同じ社会性昆虫のミツバチの女王が餌とするロイヤルゼリーはヒトの健康食品や化粧品に応用されており、研究チームはシロアリの給餌物についても同様に研究が発展するよう期待を込め、ロイヤルフードと命名した。

 松浦教授は「王は寿命、女王は産卵と求められる能力の違いが成分の差になっているのではないか。成分ごとの機能の研究はこれからだが、新たな研究領域を示せた」と話している。

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