兵庫県の斎藤元彦知事は30日、県所管のこども家庭センター(児童相談所)が受理した児童虐待の相談を、県警本部や県内全46警察署とリアルタイムで共有するシステムを導入する方針を明らかにした。来年秋の運用開始を目指す。
神戸市西区で穂坂修ちゃん(6)が死亡した虐待事件を受け、県は7月から情報の全件共有を開始したが、月に1回、県が前月分をまとめて県警に提供する仕組みにとどまっていた。
西区の事件では、同区役所が情報を把握した約2カ月後に修ちゃんの遺体が見つかった。会見で斎藤知事は「(児童虐待は)事案が急に展開する恐れもある。小さなシグナルを機敏に把握し、スピード感を持って対応するにはリアルタイムでの情報共有が不可欠だ」と強調した。同様のシステムは既に埼玉県が運用しており、神奈川県も導入を予定しているという。
兵庫県の児相は7カ所あり、神戸、明石両市を除く39市町を所管する。元々、県警とは月に1回、情報を共有していたが、通報が2回以上あるなど比較的リスクの高い事案に限られていたため、西区の事件を踏まえて7月下旬から全件に拡大。さらに今回のシステムで即時共有を可能とし、体制の強化を図る。
新たなシステムでは、子どもや保護者の氏名、虐待の種別など従来の基本情報に加え、過去の相談内容や一時保護情報なども共有し、迅速な初動対応につなげる。また県側、県警側の双方からアクセス可能とし、県警側の対応方針なども記入してもらうことで連携を強める。
神戸市と明石市は独自に児相を持ち、それぞれ月ごとに県警と情報を共有するが、斎藤知事は「全県でシステムを展開することが大事」とし、両市に参加を呼びかける考えを示した。
システム構築には7千万円程度かかる見通しで、県は関連の費用を盛り込んだ一般会計補正予算案を9月開会の県議会定例会に提出する。(田中陽一)