【佐伯】林業の経験を生かして肉用牛繁殖に参入した「グレイズ」(佐伯市西谷町)は、伐採後の林地、耕作放棄地を活用した放牧に取り組んでいる。牧草などを食べさせ、円安による餌代高騰の影響を最小限に抑える。国の補助事業を活用して規模拡大を目指しており、母牛を倍増して子牛出荷を強化する。
グレイズの母体は林業や木くずの処理業者。林業は植えた木が育つまで何十年もかかり、一宮智行社長(53)は「畜産は毎年安定した収入を得られる」と2017年に参入した。市内本匠山部の林地と農地約17ヘクタールで母牛46頭を飼育し、年間30頭弱の子牛を市場に出荷している。
5~10月に母牛を放牧することで、餌代約70万円の削減につながった。足腰が鍛えられて出産間隔を短くできる利点もあるという。
牛舎は現在3棟。新たに16の個室を備えた1棟(494平方メートル)を年内に整備する。事業費は約4100万円で、うち国庫補助金が4割以上。
一宮社長は「子牛価格の低迷や餌代高騰で苦しいが、放牧で何とか経営できている。将来的には母牛を倍以上の100頭まで増やし、常時雇用者も確保したい」と説明した。
県畜産技術室は「林業からの畜産参入は県内では珍しい。林地や農地の管理法として注目しており、今後も応援する」と話した。