長崎・対馬の漁業者反発 巻き網漁船の大型化計画 地元の取り分減少を懸念、水産庁介入も平行線

大中型巻き網船の大型化に反発し、対馬市漁協組合長会が開いた漁民集会=同市豊玉町、市公会堂

 長崎県対馬西沿岸で操業する大中型巻き網漁船の大型化計画が持ち上がり、地元漁業者が「自分たちの取り分が減る」と反発している。対馬市漁協組合長会は30日、市内で漁民集会を開催。水産庁が大型化後の操業を自粛させる条件の裁定案を示したが、地元の納得は得られなかった。
 同庁や同組合長会によると、対馬西沿岸で大中型巻き網漁船を操業しているのは3船団(本県2、愛媛県1)。このうち愛媛の網船が老朽化し、乗組員の居住環境改善や安全性向上などを目的に80トン型から150トン型に更新する。
 2020年に船団側が地元漁業者側に計画を伝えた。同組合長会によると、対馬沿岸の地元漁船はイカ釣りや一本釣りなどを主に10トン未満がほとんど。そのため、150トン型の巻き網船が近海で操業すれば、地元の取り分が減ると懸念。双方の協議は平行線をたどり、同庁が仲介に入った。
 同庁や船団側は、トン数を増やしても網の大きさは変わらず、漁獲可能量(TAC)制度などにより、漁獲能力は上がらないとして理解を求めていた。
 30日の集会には約240人が参加し、冒頭を除き非公開。出席者によると、同庁は、大型化した船団が操業自粛する期間として、対馬西岸5マイル以内は周年、同5~8マイル以内は半年間とする裁定案を示した。だが地元漁業者側は、現行の135トン型と同じ8マイル以遠での操業を求めたという。
 結論はまとまらず、地元漁業者側は今後の船団側との交渉を組合長会に一任することを確認した。終了後、宮﨑義則会長は「巻き網の大型化で何でもかんでも全部獲られてしまう。生活がかかっている対馬の漁業者は納得できない」と強調した。

© 株式会社長崎新聞社