【MLB】「落日の帝国」復活なるか ヤンキースの有望株が続々MLB昇格

写真:ヤンキースで数少ない若手の主力・ボルピー

現在4位のレッドソックスから3.5ゲーム差離されて最下位に沈むヤンキース。33年ぶりの最下位でのシーズン終了が日に日に現実を帯びつつある。

そんな中、ヤンキースはやや驚きとも言える動きを見せた。現在20歳で、MLB公式のプロスペクトランキングで全体78位(チーム内2位)と評価される有望株ジャッソン・ドミンゲスをMLBに昇格させる方針だというのだ。また、同時にチーム内8位の有望株オースティン・ウェルズも昇格が決定。同時にチームは大ベテランのジョシュ・ドナルドソンをリリースしており、本格的に世代交代を進めていく姿勢を前面に出している。

ドミンゲスは今季AA級で開幕し、109試合に出場。507打席で15本塁打を放つなどOPS.781とまずまずの成績を残し、8月22日にAAA級昇格を果たしていた。AAA級ではわずか8試合ながら打率.444と絶好調で、これがMLB昇格の決め手になったのかもしれない。打撃だけではなく、今季マイナー通算39盗塁を決めた俊足を生かしたプレーも大きな武器だ。

近年のヤンキースは有望株がなかなか大成しないという課題を抱えてきた。今季のスターティングメンバーを見ても、自チームのマイナーから育て上げた主力といえるのは野手でいえばアーロン・ジャッジ、グレイバー・トーレス、そして今季MLBに昇格したアンソニー・ボルピーぐらい。投手でいえばクラーク・シュミットぐらいではないだろうか。

さらに、「若手」という制限を加えると問題はさらに顕著だ。上記のうち25歳以下というくくりで見ると該当するのはボルピーだけ。そのボルピーにしても今季の打撃成績は491打席でOPS.695。もちろん年齢を考えれば優秀だが、同世代のガナー・ヘンダーソン(オリオールズ)やコービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)の活躍と比較すると少し見劣りしてしまうのは否めない。

そしてさらに問題なのは、ボルピー以外の若手はMLBレベルにまったくと言っていいほど太刀打ちできていないという点だ。ヤンキースは今季、多くの若手野手を抜擢し、MLBで出場機会を与えてきた。しかし、彼らは打率1割台とMLBの壁に当たっている。今回昇格するドミンゲスやウェルズがどうなるかはわからないが、安心はできない。

もちろんヤンキースほどの財力を持つチームであれば、マイナーからの選手供給にそれほどこだわる必要性は大きくない。FA市場で目玉選手の獲得競争を制すれば、チームの穴を埋め、戦力を維持することは十分可能だ。

ただ、ここまで若手の芽が出てこないとすれば話は別だ。FAで獲得できる選手は比較的年齢が高く、契約終盤には成績が低下することで不良債権化するリスクもある。事実、現在のヤンキースは高齢選手への支払いの影響で、マーケットにおいて大きな動きを取ることが年々難しくなりつつあった。使える資金が減少し、若手も出てこないという状況で、今や打てる手はどんどん少なくなってしまっている。

厳しい状況におかれつつあるヤンキースだが、ドミンゲスやウェルズが活躍し、来季に希望を見出すことはできるだろうか。

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