ジャン・トッド電撃訪問の週末はトヨタのラモスが先勝。ピケJr.とバリチェロも表彰台に/SCB第7戦

 新時代に向け歩みを進める南米大陸最高峰、SCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”の2023年第7戦が、シリーズではおなじみゴイアニアで8月25~27日の週末に開催され、これが歴史上600戦目を数える節目のイベントであることを記念し『GPシルバラード・ストックカー600』と銘打たれた。

 そのパドックには元FIA国際自動車連盟会長のジャン・トッドが電撃訪問するなど華やかな雰囲気となるなか、レース1ではTOYOTA GAZOO Racingブラジル陣営のセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)がポール・トゥ・ウインを達成。

 続くレース2ではアッティラ・アブレウ(ポール・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)が2021年以来となる通算18勝目を飾るとともに、両レースを通じて王者ルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)やネルソン・ピケJr.(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラ)ら同国を代表する元F1組も、表彰台の脇を固める結果となった。

 1979年設立のブラジルを代表する“ティントップ”選手権は、8月上旬開催の前戦にて同国の「モータースポーツにおける新たな章が進行中」と宣言する新車両規定『Audace SNG01』を発表。ラテンアメリカの歴史の中で「これまでに考えられた最も現代的なレーシングカーを構成する」という車体には、情報通信を担うクアルコム 社製CPUのスナップドラゴンによる、高速5G対応の通信機能が備わるほか、世界最大級の鉄鋼メーカーであるアルセロール・ミッタル社製の鋼管パイプフレームシャシーに、新開発の直列4気筒2.1リッターのターボエンジンを搭載するとアナウンスした。

 そんな新時代を目前にしたシリーズは前述のとおり、このゴイアニアの週末に記念すべき600戦目を迎え、今回は新型ピックアップトラック『シルバラード』の同国発売を目前に控えたシボレーをイベントのタイトルパートナーに迎えた。

「シボレーがこの国でもっとも有名で象徴的なモデルの新型車を強調するべく、こうしてストックカーを選んでくれたことを光栄に思う」と語るのは、運営組織Vicarの最高経営責任者(CEO)を務めるフェルナンド・ジュリアネッリ。

「1979年のオパラ(SCB開幕の地)以来、我々のグリッドにはつねにシボレーのモデルがあり、コース内外のファンにとって魅力的な存在だった。私自身、新型『シルバラード』を間近で知りたいと非常に興味があり、何百万人ものストックカーファンや聴衆、自動車とモータースポーツ愛好家を皮切りに、ここにいる大勢の人々が確実にファンとして支えることになるだろう」

 その新型モデルが展示されたパドックには、F1時代にスクーデリア・フェラーリの指揮官として辣腕を振るい、本社マラネロのCEOも務めた“跳ね馬の顔”ジャン・トッドが来訪。直属の元部下である“時の人”フェリペ・マッサ(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)の特別ゲストとして「偉大な友人であり第二の父親」が招待された。

「ストックカーを見学するのは初めてだ。ブラジルのモータースポーツの主要カテゴリーにおける彼の新たな人生において、ここに来てフェリペのそばにいられることをとてもうれしく思う」と語ったトッド。

「今日のイベントは、モータースポーツとレースに対する人々の愛と情熱の度合いを反映している。ブラジルにはアイルトン・セナ、フェリペ・マッサ、ルーベンス・バリチェロ、ネルソン・ピケ、エマーソン・フィッティパルディなど、チャンピオンや勝者の長い歴史がある……まさにモータースポーツはこの国の文化の一部なんだ」

歴史上600戦目を数える節目を記念し『GP Silverado Stock Car 600』と銘打たれた現地には、フェリペ・マッサ(Lubrax Podium/シボレー・クルーズ)の特別ゲストとしてジャン・トッドが来訪した
予選から全30台がわずか0.711秒差圏内という極限の勝負を制したセザール・ラモス(Ipiranga Racing/トヨタ・カローラ)が、今季7人目のポールシッターとなった
今回はアウトドローモ・インテルナシオナル・アイルトン・セナの高速外周路が使用された

■赤旗終了となったレース2でバリチェロが3位獲得

 迎えた土曜は真冬の南半球ながら30度に迫ろうかという暑さのなか、曇り空の午後にアウトドローモ・インテルナシオナル・アイルトン・セナの高速外周路を使用した予選が実施された。

 ここではトヨタ・カローラが躍動し、選手権ランク降順に3台ずつのグループに分かれる異例のフォーマット変更のなか、外環状2.695mのトラックで上位23台の差が0.5秒未満、全30台がわずか0.711秒差圏内という極限の勝負を制したラモスが、2023年シーズン7人目のポールシッターとなった。

「この場所が本当に気に入っているよ」と語った元イタリアF3王者で、約1年前にもここで勝利を飾っているラモス。「ゴイアニアは僕にとってとても特別な場所だし、いつもではないが(笑)ほとんどの場合、昨年の優勝のようにここで良い結果を得ることができる」

「10分の1秒の改善はとても大きく、あらゆる細部が重要だ。このコースでは先頭からのスタートが重要で、オーバーテイクポイントが多くいつものサーキットとは少し違う。長いレースでスリップストリームも効く。クルマのケアに集中して良いスタートを切れればと思っている」

 そのラモスはレース1の義務ピットウインドウが開いたあとも首位を維持し続け、背後からは2列目3番手発進だったピケJr.が、ルーカス・フォレスティ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)をパスして背後に迫る。

 ファイナルラップでは260km/h以上のペースでコンタクトを伴う接近戦を繰り広げたカローラの2台が、そのままの状態でフィニッシュラインへ。サイド・バイ・サイドの状態でわずか0.514秒先行したラモスが、昨季10月以来となるゴイアニアでのトップチェッカーを受けた。

「レースでの勝利はいつだって特別で、簡単な勝利などない。でもネルシーニョが2番手に上がって以降は注意深く観察していたから、そんなに難しいことはなかったよ(笑)」とおどけた勝者ラモス。

 続いてトップ10リバースグリッドとなったレース2は序盤から荒れた展開となり、スタート直後からセーフティカー(SC)が介入。ここで早くも王者ルーベンスの愛息“ドゥドゥ”ことエドゥアルド・バリチェロ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)や、ラモスの僚友で週末を前に選手権リーダーを務めていたチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)らが早くも戦列を去ることに。

 そのSC明けリスタートで主導権を握ったのがアブレウで、義務ピットの戦略を挟んで息子の仇討ちとばかりにルーベンスが上位に浮上。さらに今季はTCRにも進出するラファエル鈴木(ポール・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)が僚友アブレウのサポートに付き、ルーベンスの背後からは20歳のジャンルカ・ペテコフ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)が続くなど、この2チームによる対決構図となる。

 しかし優勝争いはホームストレートでの大事故により中断され、ここでは2021年王者ガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)も敢えなくリタイアに。そのままレースは赤旗で終了となり、アブレウ、鈴木、ルーベンスの表彰台が正式結果となった。

 これでレース2の5位に喰い込んだシリーズ3連覇のダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)が新たにポイントリーダーを引き継いだ2023年SCBは、9月15~17日にブラジル南部リオグランデ・ド・スル州の州都ポルト・アレグレにあるヴェロパークにて、第8戦が開催される。

レース1はネルソン・ピケJr.(Crown Racing/トヨタ・カローラ)とのサイド・バイ・サイド・フィニッシュとなった
レース2は王者ルーベンス・バリチェロ(Full Time Sports/トヨタ・カローラ)も奮起し、最終的に3位表彰台を獲得した
アッティラ・アブレウ(Pole Motorsport/シボレー・クルーズ)が2021年以来となる通算18勝目を飾り、ラファエル鈴木との1-2を決めた

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