桜井さんに最後の別れ 茨城・水戸で告別式 布川事件で再審無罪

約350人が参列した桜井昌司さんの告別式=水戸市堀町

茨城県利根町布川で1967年に男性が殺害された「布川事件」で再審無罪が確定し、23日に76歳で死去した桜井昌司さんの告別式が31日、同県水戸市堀町の市斎場で執り行われた。桜井さんの支援者ら約350人が参列。桜井さんの冥福を祈り、最後の別れを惜しんだ。

再審弁護団の谷萩陽一弁護士は弔辞で「桜井さんの言葉に、どれほど多くの冤罪(えんざい)で苦しむ人たちが励まされたか。桜井さんの言葉をもっともっと聞きたかった」と述べた。

喪主を務めた妻の恵子さんは「悲しいけれど、見事に桜井昌司の人生を生ききったように思う。夫のモットーは『つらい時こそ苦しい時こそ明るく楽しく』。遺志は私と皆さまに引き継がれた」と語った。

告別式には、大阪市の小6女児焼死事件で再審無罪となった青木恵子さんら、桜井さんの支援を受けた人たちも駆け付けた。

青木さんは「絶望していた時に桜井さんが面会に来てくれた。『青木さんの事件は勝てる。そうしたら(刑務所から)出てきて、励ます番だ』と希望をもらった」と謝意を示した。

桜井さんは67年に茨城県警に逮捕され、78年に強盗殺人罪などで無期懲役が確定。共犯とされた杉山卓男(たかお)さん(2015年死去)と獄中から無実を訴え続けた。09年に再審開始が確定。11年に水戸地裁土浦支部の再審公判で無罪となった。身体拘束は約29年間におよび、無罪となるまでに約44年を要した。12年には捜査の違法性を訴え国と県に賠償を求め提訴。21年、国と県に賠償を命じた東京高裁の判決が確定した。

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