「えっ、こんなに金沢に止まるの?」。31日、北陸新幹線金沢―敦賀の運行計画を報じる本紙朝刊を見て、地元の経済団体職員は目を丸くした。
この職員が驚いたのは、東京発着の「かがやき」「はくたか」の停車駅だ。計24往復のうち4割に当たる10往復が金沢以西の新規開業区間を走らず、敦賀延伸後も金沢駅が「終着駅」となる。
●全50往復が停車
富山・金沢―敦賀間を走ることになる特急接続の「つるぎ」を含めても、全50往復の新幹線が全て停車するのは金沢駅だけである。
南加賀の首長が「東京直通の本数が少なすぎる」と落胆する一方、金沢は多さが際立った。30日、福井市内で行われたJR西日本と東日本の会見でも、この「格差」に関して質問が飛んだ。
JR西の長谷川一明社長は「速達性や利便性、ニーズに合わせて運行するということ」と答えた。この発言について、鉄道評論家の川島令三氏は「JRにとっては、敦賀延伸後も金沢が北陸のハブ駅という位置付けなのだろう」とみる。
長谷川社長の言葉には、開業から8年たってなお高い集客力を誇る金沢への信頼がのぞく。
北陸新幹線の利用者は金沢開業1年目に925万人を記録し、その後も850万人台を超える高水準で推移。新型コロナの影響でいったん落ち込みはしたが、足元では7割まで回復しており、金沢駅は週末になるたび、旅行カバンを抱えた観光客でごった返す。
●2度の乗り換え
一方、金沢に集中しがちな県外客の視線を北へ向けようと必死なのが能登の観光業界だ。
北陸新幹線が敦賀開業を迎えると、現在、七尾市の和倉温泉駅まで乗り入れているJR北陸線特急「サンダーバード」は敦賀止まりとなる。関西―能登を移動する場合、敦賀で新幹線「つるぎ」、金沢で特急「能登かがり火」と2度の乗り換えが必要になり、誘客に影響しかねない。
実際、31日に関西から列車で和倉温泉入りした鹿児島県の会社員男性は「たまに仕事で能登に来るが、何回も乗り換えがあるのは面倒だ」とこぼした。
和倉温泉観光協会の多田邦彦会長は「敦賀での乗り換えは8分と聞いているが、数字以上に心理的な負担があるかもしれない」と懸念。その上で、関西との時間距離が現在より22分間短縮される追い風を生かす必要があるとし、「周辺地域と広域での観光ルートをつくり、能登の魅力を発信することで人を呼び込みたい」と力を込めた。
新たに生じる乗り換えのデメリットと、新幹線がもたらす時短のメリット。どちらが勝るかは地元の熱意と工夫次第といえそうだ。(経済部・谷内俊介)