【MLB】エンゼルスから選手をクレームした球団の狙いは エンゼルスは贅沢税以下に年俸削減へ

写真:デッドラインの目玉で移籍してきたジオリトはガーディアンズへ

現地8月31日、エンゼルスからウェーバーにかけられていた5選手がクレームされ、他球団に移籍することが決まった。

ルーカス・ジオリト、レイナルド・ロペス、マット・ムーアの3投手はガーディアンズにクレームされた。現在64勝70敗と負け越し、中地区首位のツインズには5ゲーム差、ワイルドカードには到底望みがないという状況ながら、ガーディアンズが補強に動いた。

ウェーバーからのクレームは対価を必要とせず、年俸の引き取りが発生するだけ。勝率が.478と低く、選手をクレームする上では有利な状態にあったガーディアンズが、地区優勝への望みを繋ぐため、安価な賭けに出たと見ることができる。資金豊富なイメージのある球団ではないガーディアンズだが、デッドラインにおけるトレードで主力のジョシュ・ベルとアーロン・シバーリを放出した分、資金に余裕があったということだろう。この3選手をクレームしても、わずか300万ドルほどの負担で済む、と『ジ・アスレチック』のガーディアンズ番記者ザック・マイセル記者が報じている。

さらに地区優勝を争うツインズも勝率は.515に過ぎず、ガーディアンズとのクレーム順位はさほど変わらなかったため、ツインズによるクレームを防ぐ意味合いもあっただろう。ガーディアンズは現地4日から最後のツインズとの直接対決3連戦を残しており、そこで逆転を期す形となる。

さらにエンゼルス、ヤンキースからウェーバーにかけられていたハンター・レンフローとハリソン・ベイダーをレッズがクレームしている。レンフロー、ベイダーともに左腕に対して強い右打ちの外野手で、左打ちの外野手(フリードル、ベンソン、フレーリー)が多いレッズの外野陣にはフィットする存在だ。

そして、同じくウェーバーにかけられていたリリーバーのドミニク・リオンも、古巣マリナーズからクレームされて移籍となった。セプテンバーコールアップによるロスター拡大もあり、強固なブルペン陣を持つマリナーズでさえ、リリーバーはいくらいても問題ないということだろう。

デッドラインでの大補強からわずか1ヶ月後、6人の主力選手をウェーバーにかけることで球界に衝撃をもたらしたエンゼルスだったが、当初の目的通り、大きく年俸を削減することに成功した。

5選手の放出によって500万ドル以上の節約に成功し、暫定的に贅沢税のしきい値2億3300万ドルを下回ったことを『オレンジカウンティレジスター』のジェフ・フレッチャー記者が報じている。

累進的に罰金が膨れ上がる贅沢税のルールでは、昨年以前は贅沢税に引っかかっていないエンゼルスへの罰金は軽微なはずだった。しかし、大谷翔平のFAが控える現状、来季以降への好影響は見過ごせない。

FAとなる大谷に対してエンゼルスがクオリファイング・オファー(QO)を提示することは確実視されている。もし大谷が他球団に流出した場合、そのQOの補償で得られるドラフト指名権は贅沢税に引っかかっていれば、4巡以降の補償ラウンドであるのに対し、贅沢税の対象でなければ2巡以降の補償ラウンドのものになる。

指名権といってもただ1人指名できる枠が増えるだけではなく、指名権に紐付けられているボーナスバリューもその分増えることになるのがポイント。今年のドラフトの場合、2巡の次の補償ラウンドのボーナスバリューはおよそ100万ドルであるのに対し、4巡の次では50万ドル未満と大きな差がある。ボーナスバリューが増えれば増えるほど、クオリティの高い選手を多く確保できる公算が上がっていく。

© 株式会社SPOTV JAPAN