「使い続けたい」を支えるカリモク家具の「修理部門」、家具修理歴30年のベテラン職人に密着!

1940年に愛知県刈谷市で創業した高級家具メーカー「カリモク家具」。現在、ウッドショックをきっかけに、国内外の木材の価格が高騰していることなどを受け、家具業界全体が大きなピンチを迎えています。そんな中でも売り上げが好調なのが、家具の「修理部門」です。古くて使えなくなった、20~30年ものの家具の修理を続ける職人を取材しました。

巣ごもり需要で追い風も、資材調達に赤信号の家具業界

広いショールームに置かれたテーブルやソファなどの家具たち。愛知県東浦町にあるカリモク本社ショールームの光景です。

(カリモク家具・山田郁二常務取締役)
「『天然木』に非常にこだわっていまして、やはり素材がしっかりしていないといくら作りが良くても長持ちしない」

コロナ禍で、家の中で過ごす時間が増える「巣ごもり需要」によって、家具業界にとっては追い風となりました。デスクチェアが例年の数倍売れるなど、ちょっとしたバブルでしたが、今は困難に直面しています。タイミング悪く、資材が高騰しているのです。

ウッドショックを引き金に、外国産だけでなく国内の材木も軒並み高騰。商品全体で約2割の値上げを余儀なくされました。

(カリモク家具・山田郁二常務取締役)
「一年の中で2回価格を変えるという異常なことになっている」

新たな木材の調達が、これまでのようにはいかなくなっている異常事態です。その中で、着実に売り上げを伸ばしている部署がありました。東浦町にあるカリモク家具総張工場。300台以上のミシンが並び、新製品のソファが作られている工場の一角に、その部署はありました。

20~30年ものの家具がずらり!全国でも珍しい修理専門の部署

日焼けした椅子や、犬にかじられたソファなど、全国各地から運び込まれたボロボロの家具がずらりと並びます。

(カリモク家具総張工場・神谷政志次長)
「お客さんが20年30年使ったものを預かって剥がして修理をする。多い時は毎月(ソファ)80台ぐらい。待っていただいて何とか対応する」

カリモク家具は、家具メーカーの中では珍しく修理専門の工房を持っています。中には型紙もないような古い物が持ち込まれることも。糸を解いて広げ、再度型紙を作り直して、新しい椅子を一から作るように対応するといいます。修理を行う職人は27人。中でも、ずば抜けた技術を持つベテランが、中学卒業と同時にカリモク家具で働き始めたという、社歴57年の大ベテラン、竹折幸男さん(72歳)です。

(竹折幸男さん)
「まず使えること、次はいかにきれいに、いかに長く使えるか。お客さんが思っている以上にきれいに直っているはず、絶対に」

竹折さんがこれまでに修理した家具は約3万点。この日、修理していたのは家庭で20年以上使われた椅子です。

(竹折幸男さん)
「修理は新品を作るより2倍から3倍(時間が)かかる。工場で作る場合はラインで順番に作るのですぐできるんですけど、ここは剥がして色を落として全てやるので、ものすごく時間がかかる」

「品番は頭に全部入っている」全国から運び込まれる家具に臨機応変に対応

大ベテラン竹折さんの椅子の座面張替え作業を、若手社員と比べてみると、その速さは10倍以上。座面のカーブに沿って布を張る必要があるため、丁寧さも不可欠です。修理をしている間にも、全国から次々と家具が持ち込まれます。竹折さんの神髄は、スピード以外にもありました。

続いて修理に取り掛かったのは、1992年製造の籐の椅子。さっそく修理かと思いきや、まず向かったのは、本棚でした。数十年分のカタログの中から、即座に物を特定します。型番が分からなければ、部品を取り寄せることもできません。

(竹折幸男さん)
「引き出し一つ持ってきてもらえば、これはカリモクのこういうやつだと分かります。品番は頭に全部入っている」

竹折さんは、40歳の頃に修理の仕事に就く前は営業マンでした。その経験が、今の仕事にも生かされていると話します。若手社員も、分からないことは商品知識が豊富な竹折さんを頼る場面が多いそう。

本来のパーツが製造中止になっているものは、市販のもので対応します。元々高級家具の部類に入るカリモクの商品ですが、籐の椅子など加工が難しく、高額な素材を使う家具の中には、直すより新しく買った方が安いものも珍しくありません。

(竹折幸男さん)
「新品で買った時の値段の倍以上出す人がいっぱいです」

「3K」と呼ばれる環境の中、定年退職後も仕事を続ける理由は?

新品なら機械でできる仕事も、修理は多くを手作業で行うため、1日にできる修理は5~6点。お客さんの「使い捨てにしたくない」という思いに応える仕事です。

持ち込まれる家具の中には、汚れがひどいものもあり、決して快適な環境ではありません。それでも竹折さんは、定年退職後も週3日の勤務を続けています。決してきれいではなくキツイこともあり、「3K」と呼ばれる環境だといいます。それでもこの仕事を続ける理由は…。

(竹折幸男さん)
「何がやりがいといったらもうね、感謝だけですよ。お客さんからお金頂いて感謝されるって、そんないいことないですよ」

今日も竹折さんは、修理に持ち込まれた家具と、その家具に込められたお客さんの気持ちに真剣に向き合います。

CBCテレビ「チャント!」8月22日放送より

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