ヤマハのスクーターで違いを検証!軽二輪と原付二種を乗り比べ

【BrandPickup】

左:XフォースABS、右:シグナス グリファス。

通勤・通学、お買い物。日々の移動手段としてとっても便利なコンパクトスクーター。最近は、車検がなく高速道路も走ることができる軽二輪クラスのモデルも増えてきたりして、どれを選んだいいか迷っている人も多いんじゃないだろうか? そこで今回は、同じようなサイズ感のヤマハのXフォースABSと、シグナス グリファスでその違いを検証してみよう!

試乗・文:谷田貝 洋暁
写真:武田 大祐

『XフォースABS』の公式HPはこちら!『シグナス グリファス』の公式HPはこちら!## XフォースABSとシグナス グリファスの製品概要

XフォースABS/価格:396,000円(税込)

XフォースABS

XフォースABSは、2022年6月に登場した高速道路も走れる軽二輪スクーターで、キャラクターとしてはマジェスティSに代わる車両として入れ替わるように登場。マジェスティSにはなかったトラクションコントロールシステムやVVA(可変バルブ)、スマートフォンアプリとのコネクト機能を搭載している。

ただマジェスティSでも、乗り降りがしやすく荷物も置けると好評だったステップスルータイプのフロアはそのまま引き継ぎつつも、軽量・高剛性の新フレームを採用したことでスポーツ性もアップしている。

YAMAHA X FORCE ABS
<SPEC>
●全長1895㎜/全幅760㎜/全高1120㎜
●ホイールベース1340㎜
●シート高815㎜
●車重130㎏
●水冷4サイクル単気筒SOHC4バルブ 155㏄、15PS/8000rpm、14Nm/6500rpm
●変速機CVT
●燃料タンク容量6.1ℓ
●ブレーキF/R=ディスク
●タイヤF=120/70-13 R=130/70-13
●ボディカラー:マットダークグレーイッシュリーフグリーンメタリック2/マットダークパープリッシュブルーメタリック1/ブルーイッシュホワイトパール1/ブラックメタリックX
●価格:396,000円(税込)

シグナス グリファス/価格:374,000円(税込)

シグナス グリファス

一方のシグナス グリファスは、125ccクラスの原付二種スクーターで2021年12月にフルモデルチェンジ。原付二種クラスということでXフォースABSのように高速道路は走れないものの、やはり車検がなく、ファミリーバイク特約が使えることで、軽二輪クラスに比べて維持費がかからないなどの特徴を持っている。

シグナス グリファスの特徴は、2021年のフルモデルチェンジで得た水冷エンジン。以前のモデルに比べてパワーは20%以上向上し、燃費もWMTCモード値燃費で44.5km/ℓと約20%も良くなっている。

YAMAHA CYGNUS GRYPHUS
<SPEC>
●全長1935㎜/全幅690㎜/全高1160㎜
●ホイールベース1340㎜
●シート高785㎜
●車重125㎏
●水冷4サイクル単気筒SOHC4バルブ 124㏄、12PS/8000rpm、11Nm/6000rpm
●変速機CVT
●燃料タンク容量6.1ℓ
●ブレーキF/R=ディスク
●タイヤF=120/70-12 R=130/70-12
●ボディカラー:ビビッドイエローイッシュレッドメタリック1/ディープパープリッシュブルーメタリックC/ホワイトメタリック1/ブラックメタリックX
●価格:374,000円(税込)

ヤマハのXフォースABSとシグナス グリファスのサイズ比較

左:XフォースABS、右:シグナス グリファス。

40万円を切る価格に、ステップスルータイプのフルフラットフロアなど排気量以外はよく似たキャラクターを持つこの2台。並べてみてもなんだか車格は同じくらいに感じる。確かに排気量の大きいXフォースABSは車両重量130kgと、シグナス グリファスに比べて5kgほど重たいものの、全長に関していえば1835mmとXフォースABSの方が40㎜も小さくコンパクト。駐輪スペースに関して言えば両車とも同じ場所に停められると思っていいだろう。

また最小回転半径に直結する軸間距離に関しても、なんと2台は同じ数値の1340㎜。実際に押し歩きしてみた印象は、タイヤ径が12インチで1インチ小さいシグナス グリファスの方がクイックでやや小回りが効くように感じるがほぼ同じくらいと言っていい。ハンドル幅である全幅はXフォースABSの方が760㎜と70㎜ほど幅広だが、押し歩きに関してはむしろ力が入れやすかった。

XフォースABSとシグナス グリファスの足つき比較

XフォースABS シート高:815㎜

ライダー:身長172cm/75kg

シート高815㎜。シート前部の角がしっかりと削られているため、足をごく自然に下へ真っ直ぐ伸ばすことができる。足つき性は両足をつこうとすると踵が4cmほど浮く程度。母指球でしっかりと支えられるため不安はない。

シグナス グリファス シート高:785㎜

ライダー:身長172cm/75kg

シート高785㎜。XフォースABS同様、シートの前部の角が削られており、シートの低さ分くらい足つき性がよく、両足をつこうとすると1cmほど踵が浮いた。ポジションに関しては、シグナス グリファスはフロア前部に足置きがあり、ポジションの自由度が高いこと大きな違いとなっている。

Xフォースlow シート高:785㎜(概算値)

ライダー:身長172cm/75kg

XフォースABSの純正アクセサリーには、最大約30㎜の足つき性アップが見込めるワイズギア製のローダウンシート(21,450円/税込)が用意されている。またこのローダウンシートを組み込んだアクセサリーパッケージのXフォースLowもあり、こちらの価格はなんと407,000円 (税込)でローダウンシートを単体購入するより10,450円もお得なセットになっている。

ローダウンシートを組み込めばシート高785㎜とシグナス グリファスと同じ数値までダウン。しかもシートベースは同一のためシート下の収納容量に変化がないのがうれしい。

計算上はシグナス グリファスと同じ785㎜になるXフォースlowのシート高だが、実際の踵の浮き具合も一緒で1cm程。足つき性を気にするならローダウンシートの導入を検討してみよう。

XフォースABS&シグナス グリファス 実走比較

スポーティなキャラクラーのXフォースABSには操る楽しさがあり、コーナリングも楽しい。

さていよいよXフォースABSとシグナス グリファスを実走インプレッション! まずは一般道から乗り比べてみると、意外や意外。“スクーターってそんなに変わらないでしょ?”なんて思いながら乗り始めたのだが、思ったよりも随分キャラクターが違うというのが正直なところだ。

なんというか、シグナス グリファスの方がビジネスバイクっぽい乗り味で、XフォースABSは楽しむための趣味の乗り物という感じ。走らせているとスポーツバイクのような操る楽しさがある。

シグナス グリファスはビジネスバイク的な快適性優先の味付け。コーナーを攻めるようにはできていない雰囲気。

ただ、これはシグナス グリファスが悪いというわけではなく、“通勤・通学というフィールドに特化している”というキャラクターの方向性の違いだけなのだが、XフォースABSはそこにプラスして“操る楽しみ“がある雰囲気だ。

XフォースABSにはハンドリングにダイレクト感があり、コントロールしやすい。

具体的には、かなり車体がしっかりしていて限界値がより高い。このためスロットルをアクティブに開けたり、強めのブレーキングをした場合の安心感がXフォースABSは段違いに高い。排気量が大きくより速度が出るためその分、車体の剛性が高く作り込まれているのだろう、その車体の余裕は一般道でもしっかりと感じられる。

交差点や極低速の旋回など、タイトな場面ではタイヤの小さいシグナス グリファスの方がクイックで小回りが効く。

コンパクトスクーターは通勤・通学といった実用的な用途がメインとなるのは間違いない。ただ、そんな日々の移動のなかで、スロットルを開けたり、コーナリングする楽しさが自然と味わえるとしたらとても嬉しいことじゃないだろうか? XフォースABSは何気ない日常に“操る楽しさ”という彩りを添えてくれるのだ。

XフォースABSは、リヤタイヤ空転によるスリップダウンを防ぐトラクションコントロールシステムも装備。雨の日など滑りやすい路面で非常に有効な機能だ。任意でOFFにすることもできる。『XフォースABS』の公式HPはこちら!『シグナス グリファス』の公式HPはこちら!## XフォースABSなら高速走行も可能!

XフォースABSは高速走行時の安定感が意外に…というかかなりいい。

それにやはり、原付二種のシグナス グリファスとは違い、XフォースABSは“高速道路を走ることができる”。乗り物としてこの要素はとても重要だ。コンパクトスクーターとはいえ、高速道路を使えれば、通勤・通学はもちろん、たまの休日には高速道路で郊外へ遠出することだってできる。高速道路に乗ることができれば単純に行動範囲が大きく広がるのだ。

驚いたのは、XフォースABSの高速走行時の安定感のよさだ。こればかりはシグナス グリファスを引き合いに出すわけにはいかないので、キャラクター的にはXフォースABSの先代にあたるマジェスティSと比較すると、随分と高速巡航性能が上がっていると感じた。

マジェスティSは“なんとか高速走行ができる”的な乗り味で、トップスピードではちょっと車体が心許なく感じるところがあった。ところがXフォースABSは高速走行をしてみると全域にわたって車体に余裕があり、終始リラックスして乗っていられる。

しかもエンジンの伸びもいい。120km/hあたりのトップスピードまで淀みなくスパッと加速していく。この軽二輪クラスのスクーターでここまで気持ちよく高回転側が伸びるマシンもなかなか珍しい。これこそが、XフォースABSのエンジンに搭載されているVVAの恩恵である。ちなみにVVAは5000〜6000回転の域で作動し、バルブの動きを司るカムシャフトが切り替わるとメーターに「VVA」の表示が現れるようになっていた。

低回転域と高回転域でエンジンに混合気を送り込むバルブの動き方を変えるVVAを搭載したことで、XフォースABSは低回転域で力強く、しかも高回転域までよく伸びる“全域性能”を手に入れた。## ステップスルータイプのフロアをチェック

ステップボードがフラットなら、乗り降りが楽で荷物が置ける。左:XフォースABS/右:シグナス グリファス。

シグナス グリファスとXフォースABSの素晴らしいところは、両車ともステップスルータイプのフロアを採用していることだ。通勤・通学で使うなら、スクーターはやはりステップボードはフラットな方が、足を大きく上げなくても乗車でき、服装の自由度が高くて便利だ。特にXフォースABSは、高速道路を不安なく走れるような頑丈な車体が与えられているにも関わらず、センタートンネルがないのがすごい。

ステップスルータイプのフロアなら、こんなものも置けてしまう。左:XフォースABS/右:シグナス グリファス.

より高いレンジの走行を行うためにセンタートンネルを設けてしまえば、簡単に頑丈なフレームを作ることができる。ただ、それでは“気軽に乗れる”というスクーターならではの利便性が失われてしまう。XフォースABSは、不安なく高速走行ができるしっかりとした車体なのに、ステップスルータイプのフロアに拘っているところがすごいのだ。

XフォースABSは、ステップスルータイプのフロアのモデルでありながら、しっかり高速道路を走れてしまう。## XフォースABS&シグナス グリファスの細部比較

左:XフォースABSと右:シグナス グリファスの見た目の違いはフロントマスク。シグナス グリファスの方がスリムでハンドル幅も狭い。

左:XフォースABSがフロント13インチホイールなのに対し、右:シグナス グリファスは12インチ。ホイールは大きい方が安定感が増す。

両車ともステップスルータイプのフロアだが、右のシグナス グリファスは前部も足置きがある。

XフォースABSはバーハンドルを採用しており、気軽に交換してカスタマイズを楽しむことができる。左:XフォースABS、右:シグナス グリファス。

両車とも、給油口はコンソール側に装備。コンビニフックや小物入れ、USBソケットといった装備も同様に備えている。左:XフォースABS、右:シグナス グリファス。

XフォースABSはリヤホイールも大きく13インチで安定感が高い。左:XフォースABS、右:シグナス グリファス。

両車とも、可倒式のタンデムステップとグラブバーを装備しており二人乗りもしやすい。左:XフォースABS、右:シグナス グリファス。

XフォースABSはスマートフォンと連動可能。

左と中の写真がXフォースABSで、右がシグナス グリファス。XフォースABSは、スマートフォンアプリとのコネクト機能があり、燃費や駐輪位置情報などがスマートフォンでチェックできる。

両車とも、着座部の座面は広く快適で、前部はしっかりと角が落とされ足つき性をよくしている。左:XフォースABS、右:シグナス グリファス。

シート下容量は、XフォースABSが約23.2ℓで、シグナス グリファスが約28ℓ。シグナス グリファスにはヘルメットプラスアルファの余裕がある。左2枚:XフォースABS、右2枚:シグナス グリファス。## まとめ

今回は、同じコンパクトスクーターだけど排気量の違う、原付二種クラスのシグナス グリファスと軽二輪クラスのXフォースABSを比較試乗してみた。やはり排気量の大きいXフォースABSの方が、高速道路に乗れて、さらにスポーティな走りも可能という優位性が顕著に現れた。

この結果は当然と言えば当然だが、シグナス グリファスとXフォースABSでは価格帯も近く、XフォースABSが396,000円(税込)で、シグナス グリファスが374,000円(税込)。たった22,000円しか変わらないなら、XフォースABSの方が、通勤・通学時の足としてはもちろん、たまの休日には遠出もできてより楽しめること間違いなしだ。

『XフォースABS』の公式HPはこちら!『シグナス グリファス』の公式HPはこちら!

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