「中身を丸々入れ替えないと…」こどもたちの人気者だった「ロボンタ」はいずこへ

かつて、静岡市の駿府公園(現駿府城公園)内にあった静岡市立児童会館にいた一体のロボット「ロボンタ」。1980年のニュース映像をみると、来場者のボタン操作やリモコンで、いくつもの動きができ、登場当時は「最新鋭」でした。

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しかし、1999年には犬型ロボットの「AIBO」が発売されました。「AIBO」は、伏せている姿勢から、素早く立ち上がることができました。翌2000年には、「ASIMO」が登場。ロボットが片足を交互に上げて、人間のように歩きはじめました。

こうしたロボットを目にするようになった時代のこどもからすると、児童会館の「ロボンタ」の重たそうな動きは、古くさく見えていたかもしれません。

「る・く・る」に行ってみると…

児童会館は2003年に閉館。翌年、「静岡科学館る・く・る」が再開発ビルの高層階にオープンし、こどもたちの科学への興味を育てる役割を引き継ぎました。年間来館者の当初の目標は15万人でしたが、コロナ禍前までは、毎年約25万人が訪れるという体験重視の人気施設になりました。

しかし、その「る・く・る」に、「ロボンタ」の姿はありませんでした。児童会館閉館時、「ロボンタ」は故障していたようなので、もう、お役御免と、処分されてしまったのでしょうか。

人気者の「ロボンタ」はまさかの場所に…

そこで「る・く・る」を、こどもたちの夏休みも最後の8月下旬に訪ねました。すると、「ロボンタ」は展示されていないものの、倉庫の奥に保管されていたのです。

では、なぜ、「ロボンタ」は「る・く・る」では、お客さんの前に顔を見せないのか。静岡科学館「る・く・る」の代島慶一事業担当長に聞きました。

<静岡科学館「る・く・る」の代島慶一事業担当長>
「児童会館から引き継いだもののうち、鉄道模型や小型天体望遠鏡など故障していないものは、メンテナンスをして時々展示しているんです。でも『ロボンタ』は、中身を丸々入れ替えないといけないほど壊れているから、展示していません。電源を入れても、配線が切れているので、動かないし、ランプもつきません」

完璧ではないからこそ…

そう聞くと、逆に、役に立たない「ロボンタ」が、いまも倉庫に保存されている理由がわからなくなり、再び代島さんに尋ねました。

<静岡科学館「る・く・る」の代島慶一事業担当長>
「40年以上前の貴重なロボットですし、『る・く・る』の持ち物というより、静岡市所有の財産として登録されているものなので、簡単に解体や処分はできないのです」

「『ロボット三要素』ってわかりますか?」

反対に代島さんに聞かれました。

<静岡科学館「る・く・る」の代島慶一事業担当長>
「情報を得るセンサーと、その情報で判断するコンピュータ、そして、アクチュエータと呼ばれる駆動部分がロボットに必要な三要素です。この要素がそれぞれ科学技術の基礎的な教材となるので、こどもたちに科学に触れてほしい施設では、ロボットが導入されたんでしょうね」

完成度の高いVR(バーチャルリアリティ)や、万能にも思えるAI(人工知能)が当たり前のように身近にある時代。でも、それらも、人間が作ったものだから、故障するかもしれないし、完璧ではないのだという大事な感覚を、倉庫で出会った昭和のロボット「ロボンタ」は、教えてくれているような気がしました。

「ロボンタ」に奇跡が⁉

最後にうれしい話をひとつ。2024年3月からの「る・く・る開館20周年記念企画展」では、「ロボンタ」を倉庫から出して、公開することを考えているということです。
(SBSアナウンサー・野路毅彦)

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