秘密兵器は「塩バナナ」⁉ まだまだ必要です!熱中症予防 “現場のプロ”がたどり着いた対策

建設現場が編み出した「実践的熱中症対策」とは

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9月に入っても、各地で暑い日が続いています。2020年9月3日には、新潟県内で40.4度を記録するなど、最近では、9月半ばまでは熱中症のリスクに注意が必要といえます。

日頃、高い熱中症リスクにさらされているのが、建設現場の作業員です。ほとんどの場合、エアコンなどがない炎天下で、力仕事をしなければなりません。さらに安全面から長袖、長ズボンを着用し、頭にはヘルメットをかぶる必要があります。

数人が体調不良になると、仕事の進行具合にも影響をおよぼすことから、建設現場での熱中症対策は、最も「真剣」で「実戦的」だといえるかもしれません。

最悪、命を落とす危険さえある熱中症から現場の作業員を守るために、建設会社はさまざまな対策を実施。厚生労働省はこうした各社の取り組みを業界内で広く共有することなどを目的に「見える」安全活動コンクールを開催し、ハード、ソフトの両面から熱中症の予防を啓発しています。現場で生まれ、試されてきた熱中症対策を紹介します。

対策は正しい生活習慣から

「熱中症になった作業員の方たちにヒアリングをすると、朝ごはんを食べない、またはパンやゼリーのみで済ましていたり、睡眠不足だったりする人が圧倒的に多いんです」。戸田建設東京支店安全管理部長の渡邉実さんは、対策は正しい生活習慣から始まると説明します。渡邉さんがまとめた現場の教育資料「熱中症を防ごう」では、熱中症にかかりやすい人の傾向を7つにまとめています。

①朝ごはんを食べない人(正しい食生活習慣がない)
②おとなしい人(体調不良を我慢し、報告できない)
③持病があり、服薬を忘れた人(糖尿病、腎臓病、高血圧の人は重症化傾向)
④お茶や麦茶ばかり飲んでいる人
⑤独身男性(既婚者に比べて食事や睡眠など生活習慣が乱れがち)
⑥以前も熱中症になったことがある人
⑦いまの職場にまだ慣れていない人

渡邉さんは「前日に深酒したり、寝不足、体調不良だったりすると、リスクはさらに高まります」と説明します。発症する時間帯は午後2~4時が多く、作業初日から2日目にかけて、発症率が1番高いと話します。

作業中に気をつけるのが水分補給です。「ポイントは水分・ナトリウム・カリウム・食塩をバランスよく摂取することです」。渡邉さんが予防に適した飲み物として二重丸をつけたのが「冷たい味噌汁」でした。

味噌汁には適度な塩気もあり、豆腐を入れれば、タンパク質が入るので、水分+塩分+栄養が補給できます。「経口補水液は脱水症状で飲用するもので、普段の水分補給には不適です。スポーツドリンクは甘いので糖分に注意しましょう」(渡邉さん)

【適した飲み物】
・冷たい味噌汁
・スポーツドリンク
・経口補水液

逆に予防に向かないとして、リストアップしたのが、麦茶、コーヒーや緑茶といった、塩分不足になりがちになるものや利尿作用があるとされる飲み物だそうです。

【適さない飲み物】
・麦茶(塩分不足になりがち)
・酒(アルコールの利尿作用により水分を失う)
・コーヒー・お茶(カフェインに利尿作用)
・甘いジュース(急性糖尿病のおそれ)

脳がうそをつく?「自発的脱水」の危険

熱中症対策のポイントは効率的な水分補給ですが、渡邉さんは「脳はうそをつくことがあるので注意して」と警鐘を鳴らします。汗をかいて(ナトリウムを失って)水やお茶だけを飲むと、体内にはまだ水分が必要にも関わらず、血中のナトリウム濃度を一定にしようと脳から「これ以上水は飲むな」という命令が出てしまい、のどの渇きが収まり、さらに尿意を催すので体液不足、いわゆる自発的脱水に陥ります。

渡邉さんは「小腸は一度に150ccの水を30分かけて吸収します。こまめに飲み続けないと、人は暑い時期に必要な水分を補充できないのです」と水を飲む際の注意点を説明します。

おいしくて手軽、試してほしい「塩バナナ」

最後に手軽に発汗とともに失われる塩分、カリウムを補い、さらにエネルギーも補給できるアイデアを紹介してもらいました。それが「塩バナナ」。数年前から現場で休憩時間に提供し、大好評だといいます。

「塩バナナがおすすめです。100グラムのバナナから360ミリグラムのカリウムが摂取できます。さらに、バナナには吸収速度が異なる糖質が含まれているので、エネルギー補給が長時間持続します。冷やしたバナナに塩をかけて食べることで、塩分補給にもなり、さらに塩が甘さを引き立ててくれるのです」

厳しい環境で働く作業員が集まって食べる「塩バナナ」は、現場でのコミニュケーションを活発にし、さらに体調不良者の早期発見にも役立っているということです。

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