アプリリアのA.エスパルガロ、スプリントで初優勝。バニャイアも「あれ以上は無理」と称える走り/第11戦カタルーニャGP

 MotoGP第11戦カタルーニャGPで初日から好調だったアプリリアは、土曜日のスプリントレースでも勢いに乗ってアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)が優勝、マーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)が3位を獲得した。アプリリアにとっては、2023年シーズンから始まったスプリントレースにおける初めての優勝となった。

 金曜日午前中のフリープラクティス1、午後のプラクティス、そして土曜日午前中のプラクティス2、その3つのセッションで、アプリリアのライダーがトップに立ち、そしてエスパルガロ、ビニャーレス、ミゲール・オリベイラ(クリプトデータRNF・MotoGPチーム)が上位に食い込んだ。

 予選ではオールタイムラップ・レコードを更新する1分38秒639を叩き出したフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)にポールポジションを譲ったが、エスパルガロは2番手、オリベイラが3番手でフロントロウ、ビニャーレスも4番手を獲得する。

 そして12周で争われたスプリントレースでは、トップを走り、攻めるバニャイアから振り払われることなくその背を追ったエスパルガロが、7周目でバニャイアをオーバーテイク。その後は後方を引き離す走りで優勝した。ビニャーレスも3位を獲得して、スプリントレースでアプリリアがトップ3以内にふたりが入った。エスパルガロ、そしてアプリリアにとって、スプリントレースで初めての優勝である。

「ものすごくハッピーだったし、特別な気持ちだったよ」と、レース後の会見でチェッカーを受けたときの気持ちを表現したエスパルガロ。しかし、じつはエスパルガロは、午前中にまったく正反対の感情を抱いていたという。

「今日の午前中は少しビターだった。(予選)2番手というのはこの2戦を考えれば素晴らしいけど、ちょっとだけ負けたみたいに感じたんだ。僕は全力を尽くしたのに、ペコ(フランセスコ・バニャイア)はもっとよくて素晴らしかったし、ラップレコードまで記録していたからね。だからちょっと怒っていたんだよ」

「だから、スプリントレースにコミットしていったんだ」とエスパルガロは笑う。

「最初の2周はショックだった。ペコが見せたレベルはすごく速かったからだ。1分39秒前半というのは、ものすごく速いペースだ。このペースは僕の予定にはなかった。彼がそういう風にプッシュし始めて『わかった。誰が速いか、誰が先にリヤタイヤをだめにするかだ』と思ったんだ。そして、今日は僕が勝った!」

 今回のスプリントレースで、エスパルガロの優勝を決めたのは、7周目1コーナーのブレーキングだった。ブレーキングといえば、バニャイアの得意分野であるが、今回はバニャイアのイン側に位置どったエスパルガロの1コーナーでの深いブレーキングが勝った。

「今日はコーナリング中では僕のほうが速いと感じていた。でも、バイクを止めることに関しては彼(バニャイア)はキングで、オーストリアで見たように不可能だ。だから彼をブレーキングで抜くのは本当に難しい」

「でも、今日の僕は強いと感じていた」と、エスパルガロは言う。レース中、エスパルガロはこう考えていたという。「僕のキャリアのなかでは、レース終盤にオーバーテイクして勝ったことは一度もない。だから今日、やってみよう」と。

「1コーナーでものすごく深くブレーキングをしたら、フロントがロックして曲がれなかった。でもそのあとはいいペースで走れたよ」

 一方のバニャイアは、「満足している。あれ以上は無理だったからね」と、さっぱりした表情でライバルのレースを称えた。そもそもバニャイアがレース序盤にあれほど攻めたのは、エスパルガロがやってくると思っていたからだった。しかし結果的に、今回はエスパルガロの総合力が勝っていたというべきだろう。

 エスパルガロから離されたバニャイアには、レース終盤にもうひとりのアプリリア・ライダーとの戦いが待っていた。ビニャーレスである。ビニャーレスは終盤にバニャイアに追い付き、最終ラップを迎えたときの差はないに等しいものだった。勢いよく迫るビニャーレスの大きなプレッシャーがあるなかで、バニャイアの最終ラップは完ぺきだった。一分のすきもない鉄壁の防御で、バニャイアが2位を守った。

「楽しかったよ。全部のブレーキングを完ぺきにすることに集中していた。彼(ビニャーレス)を前にいかせないようにね。2009年のバレとロレンソのようなことを考えてちょっと怖かった。(※2009年カタルーニャGP、バレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソが最終ラップに激しい優勝争いを展開した)だから、ひたすらラインを閉じてバイクを止めたんだ」

 僅差の3位だったビニャーレスは「彼はすごくスマートだった。本当にうまくポイントを閉めていた。どこでオーバーテイクしようかと考えていたんだけど、彼は最終ラップすごくいい走りをしていて、チャンスなんてなかったんだ」と、バニャイアの走りを認めていた。

 とはいえ、このカタルーニャGPでは波に乗るアプリリア勢にバニャイアが食い込んだ、という感がある。決勝レースでもアプリリアの勢いは続くか。

2022年、周回数を勘違いして表彰台を逃したエスパルガロ。優勝して雪辱を果たしたと言えるかもしれない
エスパルガロの後塵を拝したが、ビニャーレスとの2位争いは制したバニャイア。強さに磨きがかかってきた
ビニャーレスの終盤の勢いはかなりのものだった。惜しくも3位

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