15歳未満の人口よりも多い犬や猫の飼育件数、迎え入れる価値観にも変化

連日、日本列島は厳しい残暑が続いていて、犬を飼っていらっしゃる方は散歩をする時間帯に苦労をしている、という話を耳にします。犬も人間と同じ様に、早朝か夜遅くにしないと熱中症になったり、地面の熱で肉球を火傷してしまう恐れがあるからです。

気温が30℃を超えると、アスファルトは50~60℃になるので大変危険です。私の家の近所でも、首元を冷やすネッククーラをして、日没後に散歩をしている犬と飼い主の姿をよく見かけます。散歩は毎日のことなので飼い主と犬、双方共に本当に大変だと思います。


世界各国でもコロナ禍で急増

コロナ禍で外出を控える風潮が強まった事をきっかけに、犬や猫などのペットを飼う人が急増しました。その風潮は日本のみならず、世界各国でも同様でした。

ペットを迎えたことがある方はお分かりだと思いますが、ペットが我が家に到着するやいなや、これまでの生活が一変します。ペットのケージなどを置くスペースの準備、食事や水の準備、排泄、室内の温度管理、しつけ、犬であれば散歩など、「待った無し」で矢継ぎ早にやる事が押し寄せます。ペットの側も、生活に慣れるまでは大変だと思います。

「癒し」を求めてペットを迎える方が多いと思いますが、飼い主として日常的に世話をするなどの責任を果たした末に感じるものが「癒し」ですから、最初から「癒し」だけをピックアップして考えるのは無理があると思います。イギリスではコロナ禍に猛烈なインフレに見舞われ、餌代や医療費が払えず、飼育放棄されたペットが2022年に前年比で25%も増え、深刻さが分かります。

このように、日々の世話は大変ではあるものの、愛くるしい姿を見せてくれるペットとの生活は、飼い主にとって何にも替え難い至福の時間です。互いに言葉が交わせない分、どのような事をしたら喜ぶか、どんな食べ物が好きなのかを、日々の様子から把握したり、また一緒に遊べる玩具を買ったり、長くなった毛をカットしに行こうなど、日常の楽しみも増えます。

余談になりますが、我が家にも長年愛犬がいました。サラリーマンを辞めてからは毎朝の散歩は私が担当し、早起きの(毎朝メルマガを書くために)良き相棒でした。愛らしい黒目がちの瞳や、可愛い仕草は今でも目に焼き付いています。

「家族」としての存在価値がスタンダードに

一方で、最近はSNSで人気になるペットが多く、毎日何本もの動画や画像をアップしている飼い主も多いです。ペット商品を扱う企業とのタイアップ企画も多数あり、同時期に同じ種類の食事やオヤツ、飲料水、ぬいぐるみ、首輪、衣服、シャンプー、爪切り、爪研ぎなどが、一斉に露出される事も頻繁にあります。

フォロワー数が突出して多いアイドルのようなペットが、喜んで食べたり、遊んだり、利用している製品であれば、「我が家のペットにも!」と、購買件数が一気に増し、企業の売上に反映することは容易に想像できます。近年ではペット同伴で利用できる宿や温泉、レストラン、カフェ、更にドッグラン付きなど、多種多様なサービスを提供する施設も増えています。専門トレーナーによるしつけをする学校や、病気の際に利く保険などの加入もあり、ペットが一生を終えるまで、まさに「家族」としての存在価値がスタンダードになりつつあるように感じます。

ここまでの過剰とも捉えられる状況は、飼い主側の気持ちの表れだと思います。15歳未満の人口よりも犬や猫の飼育件数の方が多い現実を思うと、子どもを迎えるよりもペットとの暮らしの方が多方面においてベターと考える人が多いのかもしれません。

猫はネズミの駆除を、犬は防犯を目的に飼われ、食事は人間の残飯を食べていたペットの姿は今や幻のような話ですが、大切な命の手網を握っているのは紛れもなく飼い主である人間です。長年継続する飼育代や、飼い主の体調や体力も含め、飼育放棄になるようなことだけは避けなければなりません。

最後に、ペット関連銘柄をいくつかご紹介します。

ユニ・チャーム(8113)は、ペットケア事業でペットフード・ペット用排泄シート、システムトイレ、ペット用紙おむつなどを提供しています。アニコム ホールディングス(8715) は、ペット保険専門のアニコム損害保険を傘下に納めています。エコーレディング(7427)は、ペット用品、ペットフードの卸大手で動物看護やトリマーなどを育成する「エコーペットビジネス総合学院」を運営しています。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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