「産後うつ」は誰でもなり得る!知っておきたい症状、チェックリスト、治療法

【画像】「産後うつ?と思ったら読む本」一部紹介

“心の風邪”とも言われる「うつ病」。心身が疲弊すると誰でもなる可能性があり、甘えや怠けからくるものではないということが、近年では広まってきています。

ホルモンバランスの乱れや育児の疲れから、心身の不調をきたしやすい産後は、実はうつ病になりやすい時期。「産後うつ」という言葉もよく聞かれますよね。「産後うつ」は100人のうち10数人は経験するくらい、発症率が高いのだそうです。

特に、パートナーの仕事が忙しくて産後すぐにワンオペを強いられる家庭も多い現代日本では、生まれたての頼りない命をひとりで守らなければならない重圧などから、育児にしんどさを感じる女性の話もよく聞きます。

今回は『マンガでわかる! 産後うつ?と思ったら読む本』(主婦の友社)より、産後うつの症状や原因、治療法について詳しく解説します。

産後うつって?

​マンガでわかる!産後うつ?と思ったら読む本

待望の赤ちゃんを産んだのに、なんだか気持ちが落ち込んだり、お世話中にぼんやりしてしまう。赤ちゃんは可愛いはずなのに、そう思えないしうまく笑えない……。産後、「気持ちがふさぐ」「興味や喜びの気持ちがなくなる」状態がずっと続いているなら、それはうつのサイン。

ここ1週間で、以下のようなことがあれば産後うつの可能性があります(※エジンバラ産後うつ病質問票より)。

産後うつ 症状チェック表

□笑うことができなかった
□ものごとを楽しみにして待つことができなかった
□ものごとがうまくいかないとき、必要以上に自分を責めた
□はっきりとした理由もないのに恐怖におそわれた
□することがたくさんあって大変だった
□不幸せな気分で、眠りにくかった
□悲しくなったり、みじめになったりした
□不幸せな気分で、泣くことがあった
□自分自身を傷つけるという考えが浮かんだ

こちらの質問票は簡易的なものなので、自己判断せずに参考に留め、気になる方は心療内科などで診察を。

産後うつは産後1カ月以内に発症することが多く、ピークは産後1~2週間ごろ。次に多いのは2~3カ月の頃ですが、中には10カ月くらいたってから発症する人もいるそうです。

産後うつの原因は?

内向的で真面目な人がかかると想像する人が多いかもしれませんが、実際はどんな人でも産後うつにかかる可能性があると言われています。

メンタル不調の経験がある人、周囲のサポートが乏しい人、多忙や離婚などでストレスが強い人は特にリスクが高いと言われていますが、元気で明るくて環境に恵まれている人でもなることがあります。また、統計的には初産の人のほうが多いですが、第2子以降になる人もいます。もちろん、その逆も。

原因ははっきりとはわかっていませんが、おそらく「産後のホルモンバランスの急激な変化」と「脳の炎症」ではないか、と考えられています。

妊娠中、赤ちゃんを育むために増加した女性ホルモンは、産後急激に減少し、しばらくはほとんどゼロになるそう。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの働きが弱まるため、意欲がわかず、ポジティブな気持ちになりにくくなります。

そして産後は赤ちゃんの授乳やおむつ交換といったお世話で細切れ睡眠になるため、脳に炎症を起こしやすい状態。睡眠は体を休めるためだけでなく、脳の機能を保つためにも重要な役割を果たしています。細切れ睡眠で脳に炎症が起きると、うつの引き金になる可能性があります。

また、産後の疲れだけでなく、出産自体も脳に炎症を起こす可能性があると言われています。

ほかにもいろいろな仮説が立てられていますが、気の持ち方や性格の問題ではなく、自分ではどうにもならないことが多いのだそうです。

マタニティブルーとの違い

​マンガでわかる!産後うつ?と思ったら読む本

出産したあと、気持ちが落ち込んだり、涙もろくなったりする「マタニティブルー」。出産でダメージを受けた体が回復しないうちに赤ちゃんのお世話が始まり、疲労とプレッシャーでイライラして家族にあたったり、悲しくもないのに涙が出たり……。

経験した方も多いかもしれませんが、それもそのはず「マタニティブルー」の症状は2~3人に1人という高い割合で起こるそう。

ただし、この症状は数日~10日くらい自然におさまります。産後すぐの一時的なメンタルの不調を「マタニティブルー」と呼びます。

産後うつはマタニティブルーに比べて症状が重く、数日や10日間ではおさまらず長く続きます。ただ様子を見ていてもよくならず、治療が必要なことがある病気です。

ただしマタニティブルーから産後うつに移行することもあるため、注意が必要です。

産後うつになったらどうしたらいい?

1:とにかく休む

では、自分は産後うつかも……と思ったら、どうしたらいいのでしょうか。

産後うつは自分ひとりで治すのが難しい病気です。まずは体のケアとして、睡眠をしっかりとって体を休めること。十分な睡眠を確保するためには、家族のサポートが必要でしょう。

家事が負担になるなら家事代行を頼んだり、育児についても託児サービスを利用してみるなど、少しでも自分の負担を減らす必要があります。

2:専門家に相談する

次に心のケアとして、つらい気持ちを誰かに話し、心の負担を軽くすることも大切です。パートナーや自分の親などの信頼できる相手に少しずつ気持ちを打ち明けてみましょう。

そして、社会的な支援も必要です。日常生活に明らかな問題が起きている場合は、専門家に相談してください。平日の昼間であれば保険センターが代表的な相談先です。全国の自治体に置かれていて、保健師、看護師、管理栄養士などが常駐しています。

話を聞いた保健師が必要だと判断すれば、自宅を訪問して様子を確認し、支援先につないでくれます。住民と地域の医療やサービスを結ぶ存在である保健師は、心強い存在です。

ほかにも、精神科や心療内科、産前産後にお世話になった助産師や医師など、多くの相談窓口があります。

相性もあるので、必ずしも最初に相談した人がすべてを解決してくれるわけではありませんが、まずはSOSを発信することが大切です。自分で連絡するのが難しければ、周囲の信頼できる人に代わりに連絡してもらうことから始めましょう。

3:負担なら母乳育児にこだわらない

疲れた産後の女性を追い詰めるのが「お母さんなんだから」という呪いのフレーズ。発した方は叱咤激励したつもりでも、受け取る側は自分を責める原因になってしまうことが多くあります。人から言われなくても、「お母さんなんだからもっと頑張れるはず」と自分自身にムチを打って頑張りすぎてしまうことも。

また同様に「母乳で育てたい」という考えも、こだわりすぎると負担になってしまう可能性があります。赤ちゃんにとって最良の栄養である母乳で育てられるのはもちろんよいことですが、出が悪いために頻回授乳になり心身が休まらないなど、不調をきたすようならミルクに替えるのも手です。

ミルクを取り入れて混合授乳にしたり、ミルクメインにしたりなど、自分がラクになれる育児方法をとることで、産後うつの症状が軽くなるかもしれません。

食べ物で産後うつを予防できる!?

産後うつにはどんな人でもなり得るとのことでしたが、予防法はあるのでしょうか。

実は、鉄不足による貧血が産後うつの引き金になる可能性があるそう。妊娠初期に“貧血のない鉄欠乏”(ヘモグロビン値に異常がないがフェリチンが低値である場合)がある場合、妊娠中期~産後1カ月にかけてうつ症状が悪化することが国の研究で判明しています。

鉄は全身に酸素を届けるヘモグロビンの材料になるため、鉄が足りないと酸素が行きわたらず元気が出ません。しかし、産後は5人に1人が貧血という調査結果(※一般社団法人ラブテリ調査)もあります。

産後のメンタルヘルスに影響する可能性がある鉄は、レバー、赤身の肉、赤身の魚、イワシなどからとることができます。

ヨーグルトやクッキー、ドリンクなどで鉄分が添加されたものをおやつに取り入れたり、鉄製のフライパンやスキレットなどの調理器具を使ったり、1日の目安量を守ってサプリメントで補ったりと、いろいろな方法で鉄不足対策をしてみるといいかもしれません。

また、魚の脂に多く含まれるDHAとEPAも、産後うつの発症を抑える可能性が高いと言われている栄養素です。サバ、イワシ、アジ、サンマなどの青魚を積極的にとるといいでしょう。

調理の手間がない刺身でいただくのが効率的ですが、調理するなら揚げるより焼く、または煮るほうが栄養素の損失が少ないです。サバ缶やイワシ缶など、缶詰を取り入れるのも手です。

今までうつになったことがなくても、「自分は大丈夫」と思っていても、誰しもがなる可能性がある産後うつ。自然に治癒するのは難しい病ですが、適切な治療と周囲のサポートで必ず改善します。

もし自分自身、または自分の家族が産後うつかもしれないという心当たりがあるなら、『マンガでわかる! 産後うつ?と思ったら読む本』を手に取ってみてください。症状について、治療法についてなど、マンガを交えながらわかりやすく解説されています。

そして、頼れるところを頼って心身を休め、うつから抜け出して自分たちなりのペースで育児を楽しんでくださいね。

(ハピママ*/ Mami Azuma)

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