栃木と足利も暑いのに...なぜニュースで気温出ない? 理由はアメダスの違い 【あなた発 とちぎ特命取材班】

猛暑日となったことを示す栃木駅内の外気温計

 【栃木・足利】厳しい暑さが続いた今年の夏。9月に入り猛暑日こそ減ったが厳しい残暑が続いている。栃木市内で取材に汗を流していると、市民から「なぜ栃木市はニュースで気温が出ないのか」との疑問を耳にした。媒体にもよるが、確かによく目にする地点は両隣の佐野と小山…。足利市内でも同様の指摘があり、事情を探ってみた。

 「ニュースで気温が出るのは佐野と小山だけ。間に挟まれた栃木だって暑いはずなのに」。8月、栃木市内で開かれた市主催の「まちづくり懇談会ふれあいトーク」で男性が素朴な思いを市幹部にぶつけていた。

 気象庁の地域気象観測システム「アメダス」は栃木市内にも設置されている。多くの報道機関が気象情報を伝える際のデータとしているはずだ。困惑していた市幹部ではなく、宇都宮地方気象台に取材してみた。

 「栃木のアメダスは気温を測っていないからですよ」。気象情報官の中根秀行(なかねひでゆき)(56)さんが答えを教えてくれた。

 アメダスは全国約1300カ所、県内19カ所に設置されている。(1)気温(2)降水量(3)風向・風速(4)日照時間の4要素を観測する施設が多いが、降水量のみを観測している施設もあるという。県内では栃木や足利などがそれに該当する。

 なぜ分かれているのか。理由は1974年に運用が始まったアメダスの設置基準にあった。当時、気温など4要素を観測する施設は約21キロ間隔、降水量のみを観測する施設は約17キロ間隔と定められたのだ。

 この基準は隣接県の施設との距離も関係する。現在気温などを観測している群馬県桐生や館林、茨城県古河や下館との位置関係のバランスから、県南地域では栃木や足利が選外となり、佐野と小山に設置することになったわけだ。

 栃木県発祥の地の栃木市民、元県内2番目の人口だった足利市民は釈然としないかもしれないが…。「設置場所を見直す動きは特にありません」。中根さんの言葉に希望は断たれた。

 実際の暑さはどうなのか。足利市に住む50代女性は「子どもの頃に比べてかなり暑くなった。両毛全域は同じくらい暑い」と肌感覚を口にする。

 実は足利市が河南消防署の屋上で測定、公表している気温は7月30日に40.9度を記録した。アメダスで観測された佐野の今年最高気温39.4度(7月27日)、小山38.1度(同30日)を上回る数字だ。

 温度計が地上1.5メートルの高さに統一されているアメダスとは条件が異なるため、一概に比較はできないが…。ただ、中根さんもアメダスが約21キロ間隔であることを踏まえ「県南地域は標高の差が少なく、市町で気温の差は大きくならない」と解説する。栃木も足利も暑いのは間違いないようだ。

 気象庁はアメダスや標高の情報を基にコンピューターが周囲の気温を試算する「推計気象分布」を公表している。それを基に栃木や足利の気温を提供している気象団体・会社もあるため、参考となりそうだ。

アメダス設置場所を示す気象庁のホームページ

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