緊迫のプレーオフ緒戦はトヨタ陣営との激闘を制したカイル・ラーソンが勝利/NASCAR第27戦

 ついにプレーオフへ突入した2023年NASCARカップシリーズ第27戦『クックアウト・サザン500』が、9月1~3日に満員御礼の“レディ・イン・ブラック”ことダーリントン・レースウェイで開催され、先行するトヨタ陣営を撃破した2021年王者カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が今季3勝目、キャリア通算22勝目をマーク。重要な局面となるポストシーズン緒戦を制し、自動的に“Round of 12”への進出権も手にした。

 今季プレーオフ進出の16名がノックアウト方式で次なるステージ進出を賭ける“Round of 16”のオープニングは、今週末よりチーム内のタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)とクルーメンバーを“スワップ”したクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)の支配的スピードで幕を開けた。

 その20号車“ヤフー・トヨタ”は最初のプラクティスから最速を記録すると、続く予選でもデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)やタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)らを従え、キャリア通算7回目のポールウイナーを奪ってみせる。

 しかし、その覇権は意外なかたちで終わりを迎え、ステージ1終盤にライン管理を誤った20号車は、ダメージの避けられない角度でウォールに接触。すぐさま「路面のマーブルに乗って激しくフェンスに当たった」と新たなクルーチーフに無線を入れたベルだったが、これで右フロントサスペンションを損傷し、自らの手で勝利の可能性を無に帰してしまう。

「これでトーがおかしくなり、ステージブレイク後は何度もステアリングを切らなければならなくなった……」と、最終的に23位に終わり肩を落としたベル。

 その僚友が去りし後を引き継ぎ、ステージ1からステージ2を連覇したのが好調ハムリンで、この週末に併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第25戦『スポーツ・クリップス・ヘアカットVFWヘルプ・ア・ヒーロー200』では同地通算6勝目を飾るなど、週末を終えJGRとの複数年契約も更新したエースは、ベルの40周に対し圧倒的な差をつける177周のリードを刻んで、そのままレースを支配する勢いを見せる。

 しかし中盤274周目に11号車のホイールに緩みを感じたハムリンは、アンダーグリーンの状況下ながらピットインを選択。これでラップダウンを喫したうえに、終盤330周目に発生した5台が絡むアクシデントにも遭遇し、ベルより下位の25位に沈む結果となってしまう。

今季プレーオフ進出の16名がノックアウト方式で次なるステージ進出を賭ける“Round of 16”のオープニングは“レディ・イン・ブラック”ことダーリントン・レースウェイが舞台となった
FPからセッションを支配したクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)がポール発進を決める
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第25戦で同地通算6勝目を飾ったデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)は、同日最多177周のリードを刻むもまさかの事態に

■「レースを完遂することができた」逆転勝利にラーソンは安堵の表情

 同じくトヨタ陣営内では、これがプレーオフ初進出となるダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)も、ステージ1の最終周で姿勢を乱しスピンオフ。この余波でアウトサイドレーンにいた王者ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)も自身のミスによる86周目の“ブラッシュ”に続き、ふたたび右リヤをフェンスにヒットするなど、プレーオフドライバーに次々と試練が襲い掛かる。

 これで先頭を引き継いだトヨタのレディックに対し、一時はケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)らが詰め寄る場面もあったが、こちらも“不可抗力”のピットクローズ・ペナルティにより脱落。都合90周をリードしたレディックの45号車がそのままチェッカーか……と思われた313周目。ここでの素早いピットストップ作業で逆転に成功したのは、勝負の“場数が違う”ヘンドリック・モータースポーツ(HMS)の元王者だった。

 この日はレース序盤からトランスミッションが「一瞬ニュートラルに引っ掛かった」り、思いがけぬ挙動で「面喰らうような」ウォールタッチも切り抜けながら、最後の55周でリードを守り抜いたラーソンは、最後まで追い縋ったレディックの猛攻を0.447秒差で抑え切り、レギュラーシーズン終盤の不振をも払拭する逆転勝利を手にした。

「ああ、ようやく最初から最後までレースを完遂することができたね」と安堵の表情を見せたラーソン。「最初のステージで18番手から3番手に上がったけど、そんなことが可能だとは考えてもいなかった。陽が出ているときの僕らのレースカーは本当に素晴らしかった。だから、やるべきことをやるだけだったよ」と続けた2021年のカップチャンピオン。

「不調を抱えてはいたが、ニュートラルに引っ掛かったあるときに失敗してしまい、スライドして壁に衝突した。これでトーリンクを少し曲げてしまったと思うし、そこからはちょっと苦労したよ」

「以前よりもファイトを強いられたが、僕らはゲームに集中し続けた。それは本当に重要だったし、このレースは頭を働かせることがすべてだ……。プレーオフを始めるのに当たり素晴らしいスタートだったし、このまま続けられることを願っている」

 背後の3位には前週のレギュラー最終戦も制したクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)が「ノーミス」の展開で続き、4位には23番手スタートから猛追劇を演じたHMSのもう1台、ウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と、5位にロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)が並ぶ結果に。さらにブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)、ウォレスJr.と上位7台がプレーオフドライバーのリザルトとなっている。

「これまでは、こういう良いクルマでもなかなか2位フィニッシュさえ出来なかった。それを思えば上出来」と惜敗のタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)
タイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)も、オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)に行手を遮られる
「最初のステージで18番手から3番手に上がったけど、そんなことが可能だとは考えてもいなかった」と、直近はトップ10圏外が続いていたカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)

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