社説:旧統一教会調査 解散命令請求、厳正に判断を

 宗教法人法に基づく世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の調査で、政府は質問権行使に区切りを付け、解散命令請求に向けて検討を進めるという。

 早ければ10月に宗教法人審議会を開いた上で東京地裁に請求する。

 過去に法令違反を理由に解散を命じたのはオウム真理教と明覚寺(和歌山県)の2件で、いずれも教団幹部が刑事事件で責任を問われている。

 旧統一教会に対しては、民事上の責任を認めた判決や高額献金の被害者証言など広範な証拠を総合し、解散命令の要件を満たすとの考えのようだ。

 政府内には「信教の自由」を理由に慎重な意見もあるようだが、税制面で優遇する宗教法人に厳しく適格性を問うのは当然のことではないか。

 教団を巡ってはトラブルを訴える声が全国で上がり、法外な献金集めなどにあえぐ信者家族らの深刻な実態が次々と明らかになった。

 故安倍晋三元首相をはじめ自民党議員らとのつながりも国民の政治不信を深めた。

 岸田文雄政権は政治的な思惑を排して、被害の実態に向き合い、厳正に判断しなくてはならない。

 形だけの請求ではなく、裁判所が決定できるよう証拠をしっかり固めるべきだ。

 文化庁は昨年11月以降、質問権を計7回行使した。質問は少なくとも計600項目に上る。

 だが初回は段ボール箱8個分だった教団の提出資料は、回を重ねるごとに減少した。

 回答していない項目もあるとして、過料の罰則適用を検討するという。

 政府内には「期待したほどの資料は出てきていない」との声も聞かれるが、国民には長引く質疑の途中経過が見えてこなかった。

 強い姿勢を持って組織の実態に迫れたのか。可能な限り情報を公開し、判断に至る過程を検証できるよう求めたい。

 解散命令に至ったとしても、それで終わりではない。被害の救済や抑止などに引き続き取り組まなくてはならない。

 自民党と教団の関係は、安倍氏銃撃事件から1年以上たっても未清算のままである。

 党総裁でもある岸田首相は「過去を反省し、関係を絶つ」と宣言した。だが、選挙で教団票を振り分けていたとの証言がある安倍氏について「本人が亡くなり、限界がある」とし、客観的な調査自体を放棄している。

 票の差配に関与したと疑われる細田博之衆院議長は十分な説明をしておらず、教団の名称変更に自民議員が関与した疑惑も解明されていない。

 教団との深い関係が指摘された議員らが党の要職に復帰したり、次期衆院選の候補に決まったりしている。

 政権と党の姿勢が改めて問われる。

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