ホンダの難戦は決勝まで変わらず。積年の問題、リヤグリップが致命的に/第11戦カタルーニャGP

 MotoGP第11戦カタルーニャGPは、ホンダ勢にとってまったく振るわないレースウイークとなった。初日からリヤグリップ不足、スピニングに悩まされ、まったく加速しないと訴えていたライダーのコメントは、最後まで変わることはなかった。

 スプリントレースではマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)こそ11位でゴールしたが、完走者21人のなかで、イケル・レクオーナ(LCRホンダ・カストロール)は19位、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は20位、ジョアン・ミル(レプソル・ホンダ・チーム)は21位。決勝レースでは完走者17人のなかで、マルケスが13位、中上が15位、レクオーナが16位、ミルが17位。中上、レクオーナ、ミルが最下位のポジションを占める結果で、これは金曜日のプラクティスからほとんど変わっていない。カタルーニャGPのホンダ勢は、それほど苦戦し、困難な戦いを続けた。

 カタルーニャGPでホンダライダーがここまで苦しんだ理由は、特にロングコーナーでのリヤグリップ不足、コーナー立ち上がりでのスピニングである。スプリントレース後、ミルはレースについてこう話した。

「自分のバイク人生のなかでも、最悪なフィーリングだ。驚きだよ。ほかのホンダライダーにさえ加速で劣っていたんだ。何が起こったのか理解できない。グリップがよくないのはわかっている。このサーキットには僕たちのウィーク・ポイントが浮き彫りになるコーナーがたくさんあるからね。でも、スピンがコントロールできない。スロットルを開けても、そこから(バイクが)動かないんだ。ブレーキをしてほかのライダーと一緒に(コーナーに)入っていくのは問題ないんだ。でもスロットルを開けたとき、彼ら(周りのライダー)は立ち上がっていくのに、僕はそこにとどまっている」

 中上もほとんど同じコメントだった。ホンダのカタルーニャGPは、この問題に終始したと言っていいだろう。マルケスはスプリントレースで11位でゴールしているが、序盤は転倒をも辞さないライディングだったという。それでやっと、レース中盤まで8番手を走っている状態だった。その後、マルケスは目標を完走に切り替え、ポジションを落としていった。

 ホンダはイギリスGPから中上に、オーストリアGPからファクトリーライダーふたりに新しい空力デバイスを投入している。これは、ダウンフォースを増やすことでウィリーをさせず、トルクを加速につなげることを主な狙いとしている。ウィリーをするとウィリーコントロールが介入してパワーがカットされ、加速しないからだ。ホンダは2020年からリヤのグリップ不足を改善点としていたが、今回の空力デバイスはその解決策ではない。木曜日にその理由を中上に聞いたところ、こう回答していた。

「2023年のパッケージではリヤのグリップ不足以上にウィリーが大きな問題となっているんです。ダウンフォースを増やすことでウィリーをさせずトルクを出して加速するのが(新空力デバイスの)狙いです」

「ただ、バイクのバランスがフロント寄りになりすぎてしまっています。ダウンフォースが増えたよさは残しつつ、リヤのグリップを改善させようといろいろなことやっているんですけど、リヤのグリップに関してはずーっと変わらないというか。加速域でどうしてもリヤのスピニング率が非常に多いんです。オーストリアでファクトリーチームふたりも新しいウィングを導入して、3人のコメントを共有しながらやっていますが、3人ともバランスが全く違うバイクでしたけど同じコメントでした。問題はリヤのグリップ不足です」

 結局のところ、カタルーニャGPではそのリヤのグリップ不足が致命的な問題になったというわけだ。次戦サンマリノGP後、月曜日には公式テストが行われる。ホンダの今季のいくつかのアップデートが、2024年型にどうつながっているのかを確認できるだろう。

マルケスは初日午前中に新旧エアロを比較。以降は新エアロのみで走行した

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