うそとほんと

 見分けのつかないことが社会にはいろいろある。谷川俊太郎さんの詩「うそとほんと」は、真偽を見定めることの難しさを語っている。〈うそはほんととよくまざる/うそとほんとは/化合物〉▲「利用された方の満足度No.1!」とうたう商品の広告を見聞きするが、これもまやかしが混ざった「化合物」の場合がある。適切ではない調査に基づく「No.1広告」が横行しているという▲商品を使っていない人にも調査会社が回答を求め、商品サイトの印象だけで満足度を尋ねるケースがある。No.1にしたい商品を1位と答えるまで、回答者への質問をあれこれ変える手口もある。作為的な誘導というほかない▲誤認表示で消費者庁から行政処分を受けた業者もいる。といっても処分の対象は広告主で、調査会社は対象外というから、全くもってたちが悪い▲消費者は根拠のないNo.1広告に惑わされる。うかつにも「1位を手中にできます」という口車に乗った広告主は処分の憂き目に遭う。適切な調査でNo.1広告を出した側までも疑われかねない…。うそ混じりの「化合物」の負の作用は大きい▲巧みなフェイク(偽の)動画が駆け巡る時代でもある。うそ、作為、悪意の拡散に洞察の目を光らせたい。〈ほんとの中にうそを探せ/うその中にほんとを探せ〉と詩は続く。(徹)

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