「古井戸はお城とつながる抜け穴」という口伝も 京都・南丹の住民らが冊子

まきの出荷で栄えた歴史や天気の変化にまつわる言い伝えなどを収めた冊子(南丹市日吉町殿田)

 京都府南丹市日吉町殿田の住民らが、冊子「殿田の歴史と言(いい)伝え」を発行した。古老への聞き取りや文献を基に、能の梅若家との関わりや、まきを水運で出荷して戦前まで栄えた歴史、天気にまつわることわざなどを収録。地域の語り部が年々減る中、なりわいや生活の知恵を次世代に継承する。

 殿田区集落支援事業推進委員会が7月上旬に作った。梅若家については、江戸時代まで殿田で暮らした史実や、屋敷跡の古井戸は園部城や亀山城とつながる抜け穴だという口伝を紹介している。

 まきの採集については、行われていた頃を知る90代の住民も取材。一度に約50キロを担いで下山する力持ちもいたとの証言や、大堰川の舟運で出荷するため、船を係留するための柱を挿す穴が川沿いに多く見られたことも記録している。

 雲の流れる向きから天気を予測する言い伝えや、午前10時ごろにやんだ雨は午後に再び降ることが多いという意味の地元のことわざ「阿保(あほ)が喜ぶ十時あかり」などを載せた。

 同委員会の吉田正彦委員長(71)は「取り上げた場所を実際に訪ねてほしい」と話している。A4判20ページ。500部作った。

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