社説:概算要求の膨張 借金依存を強めるのか

 新型コロナウイルス禍で膨らんだ歳出を見直し、「平時」の財政に戻すとした政府方針はどこへいったのか。本気度が疑われる。

 2024年度予算編成に向け、各省庁からの概算要求が出そろった。一般会計の要求総額は過去最大を更新し、114兆円前後に上る。さらに特別扱いの予算が、上乗せになるとみられる。

 税収をはるかに上回る歳出を膨らまし続け、国債(借金)の大量発行で穴を埋めてきた結果、国の長期債務残高は既に1千兆円を超えている。借金に依存して次世代にツケを回す体質を改めねば、政府は無責任のそしりを免れない。

 要求額膨張の中心は、防衛費である。23年度当初予算を1兆円近く上回り、過去最大となる7兆7千億円を計上した。

 防衛力の抜本的強化を掲げ、「5年で43兆円」と総額を決めた整備計画の2年目にあたる。他国の基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)にも用いる長射程ミサイル取得などに巨費を求める一方、財源確保のための増税は、25年以降への先送りが濃厚になっている。

 財源が曖昧なまま、規模ありきで軍拡を続けるのは安全保障上の安定を欠き、危うさが否めない。周辺国との緊張を高めるリスクも伴う。必要性や費用対効果を含め、厳しい精査を求めたい。

 少子高齢化の進行で膨らむ社会保障費に加え、国債の利払いや返済に充てる「国債費」の急増も見過ごせない。28兆1424億円と、過去最大だった23年度予算から11.5%増となった。日銀の政策修正に伴い、長期金利の上昇を考慮したという。金利が1%上がれば、利払い費が3.7兆円増えるとされる。税収が増えても追いつかない。借金財政のもろさを改めて認識するべきだろう。

 金額を示さない特別枠の「事項要求」の多さも相変わらずである。岸田文雄政権が看板とする少子化対策と物価高対策を中心に、幅広く盛り込まれた。

 鈴木俊一財務相は、事項要求が「予算規模の拡大につながることはない」と強調するが、23年度予算も事項要求が目立ち、概算要求総額より約4兆円も膨らんだ。「抜け穴」だらけでは、財政の平時化など絵に描いた餅になる。

 国民や企業が納める税金と社会保険料の割合「国民負担率」(21年度)は48.1%に上り、厳しさを増す。国の「身の丈」に応じた持続可能な財政運営へ、歳出を抜本的に見直さねばならない。

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