悲願のプレーオフへ!愛媛オレンジバイキングス・保田尭之ヘッドコーチ兼GMに聞く

昨シーズンB2西地区4位に終わった愛媛オレンジバイキングス。今シーズンこそ悲願であるクラブ初のプレーオフ進出を果たそうと保田尭之ヘッドコーチ(以下保田HC)が就任した。これまでB2熊本やB3佐賀(現B1)などでHCやAC(アシスタントコーチ)を歴任。2018-19 SEASONには熊本をB2西地区優勝に導いた。昨シーズンはB1滋賀(現B2)でACとHC代行を務めた。愛媛ではゼネラルマネージャー(以下GM)も兼任。シーズン開幕を1か月後に控え、目指すチーム像や編成の狙い、シーズンへの意気込みを聞いた。(聞き手・横山岳アナウンサー)

Q.どのような思いをもって愛媛のヘッドコーチに就任したか
A.このチームのこのクラブのカルチャーやアイデンティティ、「愛媛ってどういうクラブなのどういうチームなの」ということが明確にわかるよう、バスケットを通じて表現していくということが自分に課せられた重責。それに向かってしっかりコミットしたい。

Q.保田HCは熊本、佐賀時代に愛媛との対戦経験がある。昨シーズンも含めた愛媛の印象は
A.オフェンス。攻撃に攻撃を重ねてくるスピードのあるバスケットを展開してくる。昨シーズンはフルで半分以上試合をみたが、高火力のある選手がそれぞれのポジションにそろっているので、特にハーフコートのオフェンスに力を入れて個を中心に打開してくるというイメージがあった。

Q.その上で今シーズン、どのようなバスケットを目指していきたいか。
A.これまで愛媛になかったディフェンス。ハードなディフェンスからオフェンスでは自分たちが判断できるバスケット。ボールを持っている選手がパスなのかドリブルなのかシュートなのか、そのアクションに対して周りの選手が連動していくような。そしてシーズン中、仮に上手くいかなくなった時に自分たちの立ち返る場所として自分たちのベースが何なのかというところの把握が必要。それがないとシーズン通してコンスタントな戦いはできない。このプレシーズンで自分たちのアイデンティティである、ハードにディフェンスしてオフェンスで自分たちが連動して動くというのはどういうことなのかを浸透させ、選手の得意なことを一番に引き出せるようにやっていきたい。

Q.GMとしてチーム編成にも携わった。こだわったところは
A.ディフェンス。チームのバランスをとりたいのが一番で、よりディフェンシブな選手を中心に新たに獲得した。オフェンスのところは既存の選手で十分にクリエイトできる選手がそろっているので、周りのパートとして輝ける選手たち。自分が求めているスタイルでプレーできる選手がそろってくれた。

Q.去年から契約を継続した選手では、#3古野拓巳選手と#13俊野佳彦選手は保田HCと共に熊本時代にB2地区優勝を経験した
A.去年B2アシスト王の古野選手はルーキーの時から見ているが、ピック&ロールに関していえば日本で一番うまいと本気で思っている。ピック&ロールのところだけですよ(笑)。アシストはもちろんだが、タイトルも獲ったこともあるスティールにも期待したい。俊野選手はオフェンスに関しては「自分の見えたもの、感じたものをそのままプレーに預けてくれ」と常に熊本時代から言っている。とにかく思い切りの良いシュートと力強く中に切り込んでファウルをもらってくる。そういう強気な漢気あふれるプレーが彼の魅力だからこそ「もし考えて迷うことがあるならベンチに戻す。コートにいるときは常にアグレッシブな俊野であってくれ」と伝えている。

Q.その2人をはじめ、攻撃力のある選手が契約を継続した
A.#4ユージーン・フェルプス選手は在籍も長く(愛媛4年目)、まさしく愛媛の大黒柱。さらには、アウトサイドに出てもよし、インサイドで体を張るのもよしと万能な#7坂田央選手。シューターとして秀逸な#17飛田浩明選手。選手同士の潤滑油としての役割ができる#8八幡圭祐選手と信頼できる選手が残ってくれた。

Q.新戦力を見ていくと日本人登録のフォワード、ビッグマンを多く獲得した
A.去年の愛媛は日本人でインサイドの選手がいなかった。愛媛でプレーオフを目指す時に、スタイルとして新戦力の#1タッカー・ヘイモンド選手(←B3三重)がアウトサイドにいるということは他のチームとの違いになる。B2は外国籍選手をインサイドに置くチームが多い。そうなるとアウトサイドに日本人だけが固まってしまう。去年の愛媛もそう。そこでBリーグのトレンドでもある、ボールをハンドルできる外国籍選手が欲しかったのでそういう構造は意識した。

Q.そのタッカー・ヘイモンド選手は昨季B3リーグで得点王。攻撃力に期待がかかる
A.マッチアップするのは日本人が多いので、フィジカルの違いを出してほしい。ガードとしてポストアップもできるし、ピック&ロールさせてもいいし、シューターになってもいい。さらに外から体で中まで入ってレイアップもできる。いろんな組み合わせ、いろんな顔を見せられる選手。チームとしても得点パターンが一気に広がる。

Q.ヘイモンド選手で強みを出そうとすると日本人が担うインサイドが重要になる。新戦力選手各々の印象は
A.まず帰化選手登録の#11バローンマーテル選手(←3x3 MINAKAMI TOWN.EXE)は映像を見たときにミドルレンジからのワンドリブルで得点するパターンが強力だった。これは#4ユージーン・フェルプス選手が得意なプレー。フェルプス選手は愛媛に在籍が長く、他の選手、例えばピック&ロールをする#3古野拓巳選手は彼の使い方を分かっている。それをマーテル選手に当てはめることができて、マーテル選手にとっても自分の得意なパターンで得点でき、周りを活かしてプレーできるので愛媛にフィットすると考えた。#15本多青選手(←B2福島)はとにかくアスレティック。あの体格(193cm)でダンクができるのは、日本では指折りで才能あふれる選手。ただ、まだ若いので勉強も必要。日本人のビッグマンはプレータイムを得られずにシーズンを棒に振るケースがあるので、とにかく1試合でも多く出場させる機会を与えたいと思う。たとえ10秒でも次に活かせるようなプレーに期待したい。#9長谷川凌選手(←B3横浜EX)はベテランとしての経験をこのチームで出してほしい。マーテル選手は初のBリーグ、本多選手は若い。長谷川選手の背中を見て学んでもらいたい。試合ではベテランとしての安定感を出してほしい。なんといっても全員ディフェンスで体を張れる。長い目線で見てうまく使っていきたい。

Q.インサイドの要としても期待されるのが#31ジャバリ・ナルシス選手(←ドイツリーグ)。初のBリーグ挑戦となる。
A.跳躍力があり、走れる選手。そして何よりインサイドの選手でありながらシュートレンジが広く外からシュートを打てる。それによりペイント内のスペースを広げてくれる役目も彼は担ってくれる。加えてウイングスパンが長く、ピック&ロールへのディフェンスやゾーンディフェンスのバリエーションも増やすことができる。編成で身長が高いのはナルシス選手だけ(206cm)。フェルプス選手も198cmとそこまで高くはないので、全員がフルコートでディフェンスをして高い位置からプレッシャーをかけたい。24秒かけてリングからボールを遠ざけていくことを常々やっていく。相手のミスを誘発してそこから走って得点するバスケットができると思う。それをしないと今のB2では勝利に導けない。

Q.ガード陣に目をやると純粋なポイントガードが2人。新戦力の#0奥田雄伍選手(←B3金沢)は去年B3で高スタッツを残した。
A.確かに純粋なポイントガードは2人。ただ「ハンドラー」というボールを運ぶことができるという観点で見たときに僕の中ではヘイモンド選手と#51金本一真選手(←B1滋賀)も含まれる。愛媛には古野選手という絶対的な司令塔がいる中で、奥田選手は古野選手がもっていない圧倒的なスピードを持っている。そのスピード感でリズムを変えてくれる。縦の得点が欲しいときや、なかなかペイントにボールが入らない時の切り込み、ディフェンスでは前からバチバチにフルコートでプレッシャーをかけていける。

Q.ハンドラーとして期待する金本選手は去年B1・滋賀で保田HCと共にプレーした。練習生から契約を勝ち取った選手。
A.僕のシークレットウェポンです(笑)。実はシューターではない。練習生だった滋賀時代にチームの外国籍選手が「なんでこいつが練習生なんだ?ほかの選手に引けを取ってないぞ」と。そこから注目されて契約を勝ち取った選手。あの体格(180cm)でハンドルできてディフェンスも得意。ピック&ロールの状況判断もできる。ぜひ飛躍のシーズンにしてほしい。

Q.保田HCがチームを率いるときに一番大切にしたいことは
A.全員に主体的にこの愛媛オレンジバイキングスに関わることを意識づけさせること。自分たちの目標を、自分たちがこのチームに愛媛オレンジバイキングスというもののアイデンティティとかカルチャーみたいなものを築く。それは選手たちからつくっていくんだと。フロントスタッフや自分たちを応援してくれているブースターの皆さんに届くようなそれがまた最終的に分かりやすい結果としてこのクラブ初のプレーオフ進出というものが出てくる。

Q.開幕、そして勝負のシーズンに向けて
A.開幕戦から自分たちは勝ち星を本気で取りに行くようなチームでないとプレーオフなんて今の自分たちの立ち位置からすると到底たどり着かないと思っている。スタートダッシュが肝心。自分たちがやっているバスケットを通じて皆さんを魅了できるように、皆さんに興味関心をもってもらえるように誇りを持ってもらえるようなクラブを目指したい。

今シーズン、愛媛オレンジバイキングスの開幕戦は、10月6日から松山市総合コミュニティセンターでライジングゼファー福岡と対戦する。

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