GTテスト中に届いた突然のオファー。WEC電撃デビューの宮田莉朋「これが人生の将来を開く道」

 9月8~10日に静岡県の富士スピードウェイで開催されるWEC世界耐久選手権第6戦『富士6時間レース』に、LMGTEアマクラスのケッセル・レーシング57号車フェラーリ488 GTE Evoから急遽参戦が決まった宮田莉朋。7日、サーキットでチームと合流した宮田に、参戦が決まった経緯と今週末にかける意気込みを聞いた。

■「フェラーリはシミュレーターでしか乗ったことがない」

 今回のWEC富士には、もともと『TGR WECチャレンジプログラム』の一員としてトヨタGAZOO Racing(TGR)に帯同する予定であった宮田だが、出場の打診があったのは、9月5~6日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われていたスーパーGTのGT500クラスのテストの最中だったという。

「普段はテスト中は携帯をドライバーズルームに置いているのですが、一応と思って確認してみたらたくさんの連絡が届いていました」

「中嶋一貴さん(TGR-E副会長)から、『カーガイの木村さん(ケッセル・レーシングの第1ドライバーである木村武史)からオファーがあったけれど、気持ち的にはどう?』と連絡をいただいたので、『いただいたこの機会を活かしたいので、ぜひ乗らしてください』と答えました」

 そこからは、すぐに中嶋一貴副会長の元からトヨタ自動車の佐藤恒治社長へと連絡が渡り、宮田が意志を返答した約30分後には今回のWECデビューが決まったという。以降は、スーパーGTのテストをこなしながらもWECデビューに向けてチームと諸々の連絡を取りつつ準備を進めてきた。

「フェラーリはシミュレーターでしか乗ったことがない」という宮田だが、事前にチームからコックピットの操作マニュアルを送ってもらい“予習”。そしてサーキット入りした今日、実際にコックピットに座って約1時間程、チームのスタッフから操作の説明を受けた。

「今日、初めて実際にマシンに乗り込んでみて、今シーズン自分が乗っているスーパーGTのマシンよりもマッピング関係の操作が細かく、ドライバーの操作するものとメカニックの操作するものとの区別等の説明を受けながら確認しました」

実際にマシンに乗り込んで各部の説明を受ける宮田莉朋

 思いもよらぬ形で訪れたWECへのデビューに、宮田の表情は明るい。LMGTEアマクラスの印象については、「スーパー耐久に似たレースという印象です」と語った。

「ジェントルマンドライバーが居て、そこにプロが一緒に乗って戦う。自分も似たような経験はしたことがありますが、よりハイレベルなレースだと思います」

「あとは、タイヤがワンメイクであったりとか、GTEマシンはABSの機能が搭載されていなかったりといった電子制御の部分については、GT3マシンとはまた違ったものだと思います。その点は初めてなので、ステップ・バイ・ステップである必要があるかなと思います」

ヘルメットを装着して再度マシンに乗り込み、無線のチェックを行った

 また今回、「速さも最速クラスで、フェラーリ488 GTEに即座に順応できるドライバー」として宮田へ参戦の打診を送った木村武史については、実は「あまり面識がなかった」という。

「木村さんがWECに挑戦している姿を見てはいたのですが、ル・マンで一度挨拶させていただいた以外は会話もしたことがなかったですし、連絡を取らせていただいたこともありませんでした」

「僕はプロとしてやっているドライバーですが、木村さんはジェントルマンドライバーとしてレースに参戦しているので、僕たちはドライバーとしての層は違うと思います。ですが、僕は木村さんに限らずジェントルマンドライバーの方にあこがれを持っているので、そういった方に声をかけていただいて嬉しいです」

 いよいよ明日に迫ったWECデビューについて宮田は、自身への期待とチームへの感謝を込めつつその意気込みを語った。

「今まで世界で戦いたいと思って努力してきましたし、(ル・マン、モンツァと)TGRに帯同している中でもやっぱり乗りたいという想いが強かったです」

「今回は海外ではないですが、これがきっと自分の人生において将来を開く道だと思うので、機会をくださった木村さんを始め、背中を押してくださったTGRのみなさんに感謝しかありません。今回は、WECのレースウィークの過ごし方も勉強しつつ、プロとして一生懸命頑張って楽しんでいきたいと思います」

 今季は『TGR WECチャレンジプログラム』の一員として、新たにTGRのWECプログラムに帯同を開始しし、ル・マン、モンツァとその戦いの場に足を運んで経験を積んできた宮田。スーパーGT、スーパーフォーミュラと揃ってシリーズ争いを繰り広げている宮田が世界のドライバーを相手にどういった走りを披露してくれるのか。明日のWECデビューを楽しみに待ちたい。

操作系各部のチェックを終え、チームスタッフと話す宮田莉朋
WECデビュー戦は、初めてフェラーリのGTマシンに乗りこんでレースを戦う

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