中学2年で異変「人が寄ってくる感じ」 相談した兄は「根性がないからだ」 青葉被告の半生ヒストリー【中学生後編】

ストレッチャーに乗せられた青葉容疑者(2020年5月)

 36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第3回公判が7日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれた。被告人質問が始まり、青葉被告が弁護側の質問に答える形で、中学時代に生じた「異変」を打ち明けた。

 青葉被告によると、自らに「異変」が生じたのは中学2年、14歳の頃だった。町中を歩いている時、「(人が)何かを言おうとしている感じ。人が寄ってくる感じがあった」と明かした。

 「自分に好意的なことを言おうとしているのではない」。悪いこと、攻撃してくる感じだったという。

 「人が寄ってくる」とは、「寄ってきて、何か言ってくるよう」な感覚だったという。特に人混みの中でそう強く感じたとして、わざわざ遠回りして通学をしたこともあったと振り返った。

 当時、その異変について兄に相談したところ、「根性がないからだ」と一蹴された。医師や保健室の先生には相談しなかった。

 こうした状態は高校初期まで続いたという。今は消えているといい、そのきっかけは「自然かな、と思います」。

 青葉被告は、父親が無職のために直面した一家の困窮ぶりを説明した。中学2年の頃から、新聞配達のアルバイトをしていたという。

 午前5時ごろから2時間かけ、50軒ほどに配った。弁護人が「大変とは思わなかったのか?」と問うと、青葉被告は「そんなことを言っていられない立場でしたので、それでやっていました」と述べた。

 しかし、そんな生活も2カ月ほどしか続かなかったという。寝坊を3回したことで店側に怒られた。「『もうダメだ』と言われた」

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 検察側は5日の冒頭陳述で、青葉被告が京アニへ恨みを募らせた背景には「自己愛的で他責的なパーソナリティー(性格)」があると主張した。これは生育歴に起因すると分析し、両親の離婚後、同居した父からの虐待や、生活困窮に伴う転居、不登校を経験する中で「独りよがりで疑り深い性格」になった、と指摘していた。

 

 起訴状によると、青葉被告は2019年7月18日午前10時半ごろ、京都市伏見区の京アニ第1スタジオに正面玄関から侵入し、ガソリンを社員に浴びせてライターで火を付けて建物を全焼させ、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、32人に重軽傷を負わせた、などとしている。

 裁判の最大の争点は、青葉被告の刑事責任能力の有無と程度だ。

 検察側は、妄想に支配された末の犯行ではなく、「筋違いの恨みによる復讐」と主張。被告には事件当時、完全責任能力があったとしている。一方、弁護側は、被告にとって事件は「人生をもてあそんだ『闇の人物』への反撃だった」と説明。事件当時は心神喪失か心神耗弱の状態だったとして、無罪か刑の減軽を訴えている。

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