9月は自殺対策の強化月間 各自治体が命の大切さ伝える取り組み

夏休み明けとなる9月は、例年、こどもの悩みや不安が増える傾向にあり、件数が増加するため、東京都は9月を自殺対策強化月間としています。都内各地では、命の大切さを伝える取り組みが行われています。

町田市の中学校では9月6日、絵本を使って命の尊さを伝え、子どもの自殺や心の病を防ぐ特別授業が行われました。絵本のストーリーは、周りの仲間たちと比べて自分には価値がないと思いこむ主人公が、自分の悩みを打ち明けたところ、仲間から自分の魅力に気づかされ、強く生きる勇気をもらうというものです。

絵本の作者である夢ら丘実果さんと吉沢誠さんが17年前から始めた、絵本の読み聞かせによる「命の授業」は、今年で1000回を超えました。しかしその一方で、去年1年間に全国で自ら命を絶った小・中・高校生が初めて500人を超えるなど、まだまだ対策が追いついていない現状があり、今後も命の授業を続けていくつもりです。

吉野さん:「(周囲が悩みを)聞くだけで薬になる。だからこそ、1人で悩みは抱え込まずに話をしてほしいという願いを(きょうの授業に)込めました」

夢ら丘さん:「中学生になると様々な悩みを抱え込んでしまう子が出てくると思うんですけども、どうしたらそういう時に乗り越えられるかという事を、真剣に話を聞いてくれていたので、これから役にたってくれるといいなと思っています」

今回「命の授業」の開催を決めた矢島校長は、インターネットの普及など現代の子どもたちを取り巻く環境の変化で、以前よりも子どもたちのSOSを察知しにくくなっているといいます。

矢島校長:「昔はいじめでもなんでも、目に見えた体に何か現れてたというのがあったんですが、今はデジタルの中でいじめが起こったりとか、危険な人とも簡単につながってしまっているのが、すごく怖いと思っています」

子どもたちが悩みを1人で抱えこまないように、安心して話せる居場所を周りの大人が作っていくことが、これまで以上に求められています。

矢島校長:「安心できる場所が学校じゃなくてもいいから、誰か頼って自分を大切にして欲しいなって思っています」

また日野市では展示会が開催されています。展示会ではいじめにより子どもをなくした遺族らの協力のもと、亡くなった子どもの写真とともに生前、母親に向けて書いた感謝の手紙や未来への希望を綴ったメッセージなどを公開しています。この展示会は、子どもたちが苦しんでいた実情を知ってもらおうと、東京都が2018年から港区の人権プラザで行ってきましたが、より多くの人に知ってもらおうと今年初めて多摩地域でも開催しています。

都人権啓発センター 玉邑さん:「子どもたちにどういうことができるのか、大人はどういうことを考えて接して行けば良いのか、考えるきっかけになれば良い」

子どもたちの命をどう守っていくのか。教育アドバイザー清水章弘さんは「"小さな変化を見逃さない”これにつきます。普段からの観察、「食欲」「睡眠」「言葉数」で、小さいシグナルを発しているときは 家庭で抱え込まず、第三者やママ友に相談出来る体制をつくっておくことが大切です」と話します。

子どもたちのSOSを受け止めるため、東京都は様々なケースに対応した相談窓口を設置しています。まずは、いじめに関する相談窓口です。「東京都いじめ相談ホットライン」では、24時間での電話対応とメールでの相談を行っています。そして「相談ホットライン@東京」は、LINEで相談ができ、ニックネームでも大丈夫です。「話してみなよ 東京子供ネット」は、いじめ以外にも、体罰や虐待など、子どもの人権侵害に関する様々な相談ができます。またSNSの適切な利用に役立つ、「考えよう!いじめ・SNS@TOKYO」は、ウェブサイトやアプリで利用できます。

他にも、生きることに悩んでいる人の相談窓口として、「こころといのちのほっとライン」や、ネットやスマホでのトラブルを相談できる「こたエール」があります。こちらは、メールでの相談も可能です。

そして、性暴力や性被害に関する相談に24時間対応する「性暴力救援ダイヤルNaNa」や、教職員等による性暴力について通報や相談ができる窓口もあります。

こうした取り組みは、各区でも増えてきていて、大田区では8月25日から、区のホームページに、小学生向けと中高生向けに分けて「こども専用相談窓口案内」を開設しました。
そして北区では、子どもに気軽に相談してもらおうと、7月から生徒に配布しているタブレット端末からのチャット相談を受け付けていて、教育総合センターの心理士が当日中に返信するよう努めているということです。学校や家庭に関する悩みなど内容は限定せず、相談の内容によっては学校や児童相談所と連携しながら支援に繋げたいとしています。

北区教育委員会 後藤さん:「周りにいる大人にヘルプを出してほしいと考えている。勉強や人間関係で悩んでいることがあれば、いつでも相談を寄せてほしいと思う」

これまで区に相談するのは、事前に連絡したうえで、保護者と一緒に行わなければいけなかったというこで、北区としては、より気軽に相談してほしいということです。

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