宇都宮で遊べる“採石場” 飛んで、食べて、作って 歴史ある巨大空間を満喫 #私の好きなとちぎ レジャースポット巡り②

 #私の好きなとちぎ レジャースポット巡り第2弾は「宇都宮市大谷地区」。宇都宮市街地から車を走らせること約15分。巨大な採石場が姿を現した。日本遺産「大谷石文化」の構成文化財に認定されている「カネホン採石場」だ。

 2019年から土日祝日に約3万平方メートルの広大な空間を生かして体験型観光を展開している。出迎えてくれたKANEHONの高橋卓(たかはしまさる)社長(49)は、「“遊べる採石場”を楽しんで、大谷石についても知ってもらいたい」と熱っぽく語ってくれた。

 最初の体験は、昨年11月にオープンしたジップライン「ハヤブサ」。採石場の上空に張られた約200メートルのワイヤを使って滑り、高さ約30メートル以上の空中散歩を体験できる。ハーネスやヘルメットを身に着けて準備完了。スタート位置まで行くと、その高さに足がすくんだ。

 いよいよ自分の番がきた。カメラを持つ手に力が入る。従業員に背中を押してもらいスタートすると、想像以上の速さでパニック状態。それでも恐る恐る周りに目をやると巨大な採石場が一望でき、まさに絶景だ。見とれていたのもつかの間、あっという間に多くの人が見守るゴールに猛スピードで到達し、衝撃で身体が逆さになるほど跳ね上がった。照りつけるような日差しの暑さも、自分が大の大人だということも忘れた20秒間だった。

 続いてはピザ焼き体験。大谷石でできた約750キロもの石窯で本格ピザを作ることができる。まきがメラメラと燃える窯の中は300~400度になっているが、窯の横に触れることができる。大谷石の高い耐火性を知ることができた。

 ベーコンやコーン、ズッキーニ、チーズがたっぷり乗ったピザを大きなヘラの上にのせて、バランスを崩さないようにそっと窯の中に入れる。たった2~3分でおいしそうなピザが焼き上がった。お好みでベビーリーフやガーリックオイルなどをかけることができる。

 口にいれると、もちもちの生地の上のチーズがとろけ、思わず顔がほころんだ。おなかまで満たせる採石場があるなんて…。

 遊べる採石場の魅力はまだまだ終わらない。大谷石の塀に囲まれた敷地内で、子どもたちがスコップを使って必死に探しているのはパワーストーン。水晶やガーネットなど、約25種類の天然石が砂場の中に隠されている。見つけた石は持ち帰ることができる。

 大人も楽しめるものづくり体験も外せない。大谷石を使った表札づくりや、ランプシェード製作など5種類のメニューが用意されている。1種類を選び、体験時間はおよそ40分~2時間。千葉県船橋市から家族で訪れた小学4年生の並木瑛土(なみきえいと)さん(9)は時計作りに挑戦し、「すごい楽しい。来てよかった」と弾けるような笑顔を見せていた。

 採掘場探索ツアーにも参加した。江戸時代の1854年から、現在も採掘を行っていると聞いて驚いた。ガイドさんが指さす方向を見ると、かつての手掘りの跡も、機械で掘った跡も、しっかりと大谷石の壁面に残されていた。

 最盛期は大谷地区に120カ所あった採石場も現在は5カ所を残すのみ。その中でも、露天掘りを行っているのはカネホン採石場だけだ。採石場では、年間約2千トンが採石されるが、実際に使える石は約700トンだという。

 ミュージックビデオの撮影などにも使われる場所で、シンガー・ソングライターの米津玄師(よねづけんし)さんのヒット曲「馬と鹿」のロケ地でもある。実際に米津さんが立って歌った場所も教えてもらえる。

 取材日は猛暑日で、滝のように汗が流れたが、澄み渡る青空と雄大な採石場の組み合わせを眺めるのは爽快な気分だった。不思議と、吹く風はクーラーの風のように涼しく感じた。

◆周辺の観光スポット

●ROCKSIDE MARKET

▷住所:宇都宮市大谷町909大谷資料館敷地内
▷営業時間:午前9時半~午後5時(ラストオーダー午後4時半)
▷定休日:4~11月 無休/12~3月 毎週火曜(祝日の場合は営業、翌日休み)

 

●ベルテラシェ大谷

 

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