【中村雅行さん(山崎金属工業株式会社)】世界に認められた技術で作る“究極のカレースプーン”

中村雅行さん(山崎金属工業株式会社)

【プロフィール】
中村 雅行(なかむら まさゆき):加茂市出身。他業種の会社で働いていたが、洋食器産業が盛んな燕三条で長い歴史をもつ「山崎金属工業」に転職する。国内外へ高級カトラリーを展開する中で、一般向けの商品の開発に力を入れようと「カレー専用スプーン」を開発。料理に特化した洋食器の開発に注力している。


ガタチラスタッフ:『新潟人166人目は、「山崎金属工業」の中村雅行さんです!「山崎金属工業」と言えば、“ノーベル賞の晩餐会”で使用されたことで、その技術が世界に認められた新潟が誇る企業です!今回は『ノーベル賞・晩餐会用洋食器』や『究極のカレースプーン』の誕生秘話をお聞きしました。素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』

燕三条の洋食器の歴史

──「山崎金属工業」は創業105年目の歴史ある会社ですよね…!

中村さん:“箸の文化”の日本で、地域に密着しながら洋食器を100年以上作り続けるというのは凄いことだと思います。前職を退職し、“地域に密着した仕事がしたい”と考えていた時に「山崎金属工業」を知りました。

──「山崎金属工業」の歴史を教えてください!

中村さん:創業者は鎚起銅器の職人でした。その技術を用いて金属洋食器も手掛けるほどの多様な技術を習得して、スプーン工房を立ち上げたのが始まりです。戦後に進駐軍(※)から洋食器の製作を依頼されて作り出したのが、“燕三条の洋食器が世界に認知されるきっかけになった”と言われています。

※進駐軍…他国に進軍して、そこに駐屯している軍隊のこと。

──箸文化の日本で洋食器を作り続けるのは苦労も多かったのでは?

中村さん:戦争が始まってからは軍需工場として活動していました。ゼロ戦などの部品開発をするため、他県から技師としてやってきた人たちが、戦争が終わってからもこの地域に残ってくれて、洋食器産業の機械化が一気に進みました。歴史を話すとキリがないのですが(笑)、「なぜ燕三条の洋食器産業が発達したのか」を様々な角度から考えるととても面白いですよ!

──燕三条の歴史に魅了されていったのですね

中村さん:若い人たちの間でもこの地域の特殊性や面白さを売りにしようという考えが最近は広がって、「工場の祭典」というイベントが企画されたり、マンガやアニメの舞台になったり、良い流れができていると感じます。

『ノーベル賞・晩餐会用洋食器』

──「山崎金属工業」の魅力を教えてください!

中村さん:欧州メーカーのOEMを通じて本場の技術を学ぶ機会が多く、そこで得た技術を継承しています。スプーンやフォークは、昔から形を変えずにひとつの素材から作られているシンプルなものですが、当社では“平均30工程”を踏んで作っています。安価品だと6工程くらいで作るところもあるんです。それだけ“丁寧なモノづくり”をしています。

──“ノーベル賞晩餐会”で使用されたことで有名ですよね!

中村さん:それまでの晩餐会では現地スウェーデンのホテルで開催され、そこで用意された洋食器を使っていましたが、“ノーベル賞創設90周年”の記念の年でもあり、「晩餐会ではオリジナルデザインのテーブルウェアで新調してもてなそう」となったそうです。そのテーブルは“スウェーデンのデザイナーとメーカーが作る”というルールがあったのですが、質の高い商品を大量生産できる企業がなかったそうです。

──なぜその依頼が「山崎金属工業」に来たのですか?

中村さん:当時、当社の商品もスウェーデンに輸出していました。当社と繋がりのあるスウェーデンのデザイナーさんの強い推薦で、「山崎金属工業」の名前が浮上したようなんですね。そこからお話をいただき、3,000名分の洋食器セットを納めることになりました。大変光栄なことでしたが、デザインに細かい注文が入ったり、製作は大変だったそうです(笑)。晩餐会での洋食器の使い勝手の良さが評判になり、それから欧州との取引も増えました。

──“日本の技術力”が認められたのですね!

中村さん:日本製の良さは、“一つひとつをどれだけ丁寧にこだわって作っているか”ということだと思います。手を抜いてしまう部分があってはいけない。「職人一人ひとりが、常に次の工程のことを考えながら作る」のが当社の特徴です。

細部までこだわった“究極のカレースプーン”

──海外のお客様が多いのですか?

中村さん:そうですね。これまでは海外への販売が多く、国内の認知が低いというデメリットがありました。価格帯が高い商品が多かったのですが、「国内の知名度を上げよう!」と、よりカジュアルに一般向けの商品の開発に力を入れています。そこで誕生したのが「カレー専用スプーン」です!

──なぜ「カレー専用スプーン」なのですか?

中村さん:スプーンを連想した時に、多くの人が一番に思い浮かんだのが「カレー」でした。カレーに特化したスプーンを作るために各地のカレー屋さんに行き、「カレーをどう食べるか」をお客さんにリサーチしました(笑)。

──“カレーを食べる”ということから追及していったのですね!

中村さん:多かった意見として、「ご飯を最後の一粒まで、ルーを最後の一滴まで残さず食べたい」という声でした。そこで、“ご飯を一粒でも掬いやすい形”“スープカレーもしっかりすくえる深さ”“カレー皿から滑り落ちない長さ”など、細部にこだわった「究極のカレースプーン カレー賢人」が誕生しました。

──よく見ると変わった形をしていますね?

中村さん:形状が従来のスプーンのセオリーとは違うものだったので、職人さんにも「本当にこれでいいの?」と散々聞かれました(笑)。このスプーンは職人さんの苦労の賜物です。店頭やオンラインショップで販売していますが、口コミを中心に広がっていき好評をいただいています!

──私も実際に使って食べてみたいです!

中村さん:カレーを食べる時に“スプーンによってどう変わるか”を比べてみると楽しいと思います。料理がよりおいしく感じられるように作っているので、老若男女を問わず多くの方に使っていただきたいです!

──“カレー消費量全国一の新潟”だからこそ使って欲しいですね!

中村さん:それに似合ったスプーンになりたいですね。ありがたいことに「ホテルイタリア軒」さんからコラボの話をいただいて、「イタリア軒伝統のカレー3種とカレー賢人のセット」も販売しています。新潟の良さが詰まった商品なので、“新潟らしいギフト”としてご利用いただきたいです!

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──新たな商品展開も考えているのですか?

中村さん:実は「スープ専用スプーン」も発売していて、今後は“料理に特化したカトラリー”を作ろうと考えています。「口に入れた時の使い心地の良さ」が違います。“良いカトラリーを使って料理をおいしく食べていただく”ことにフォーカスした商品を作っていきます!

>>>山崎金属工業の商品ラインナップはこちら

【山崎金属工業】
住所:燕市大曲2570番地
電話:0256-64-3141(代表)
HP:https://www.yamazakitableware.co.jp/about/

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