列車から望む瀬戸内海の絶景 広島の食や文化を楽しむ インバウンド専用ツアーに密着

アフターコロナで日本を訪れる外国人の数が回復する中、沿線の期待も高まっています。広島の食や文化を、絶景を楽しむ列車で体験してもらうインバウンド専用ツアーに同行しました。

車窓から眺める穏やかな瀬戸内海…。海沿いを走る観光列車の旅を楽しんでいるのは、外国人です。

アフターコロナで沿線の期待も集まるインバウンド専用ツアーです。2020年秋に運行を開始した「etSETOra(エトセトラ)」。JR呉線から見える瀬戸内の多島美を楽しめる観光列車です。

モニターツアーには、12人の外国人を含む22人が参加しました。午前7時すぎ、ホテルに集まって浴衣の着付けを終えると、広島駅に移動します。

近藤志保 記者
「午前9時半の広島駅です。これからetSETOraに乗って安芸の小京都・竹原へ出発します」

駅員に見送られながら旅のスタートです。列車内はどこに座っても瀬戸内海を眺めることができるようにイスが配置されています。バーカウンターではお酒やおつまみ・スナックなどが販売されます。メニューは日本語に加えて、英語・韓国語・中国語の4か国語に対応しています。到着まで、海を見ながら広島の文化を体験することができます。

車内では、熊野筆を使った水書き体験もありました。参加者は、自由な発想で書をしたためます。

竹原市にある酒蔵「藤井酒造」の日本酒飲み比べも。サミットでも提供された「龍勢」シリーズを含む3種類を味わいます。

外国人参加者
「おいしかったですよ、初めて飲んで、ものすごくおいしかった」

― ふだんはどんなお酒を飲む?
「ビール。ビールに比べて、日本酒の方が1番おいしい」

実際のツアーでは、出発日によって熊野筆か日本酒のどちらかの体験になります。

その後は車内に置いてある廿日市市のけん玉などを楽しみながら、約2時間かけて竹原駅に到着です。

安芸の小京都・竹原で舌鼓 県産のこだわり食材

国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている「町並み保存地区」。江戸時代に製塩業で栄えた竹原の街には、塩田を所有した豪商「浜旦那」の建てたかつての屋敷が今もなお、並んでいます。その時代に建てられた建物などをリノベーションして活用している「NIPPONIA HOTEL」が、ツアーのランチ会場です。

竹原産の塩を添えた三原市の「神明鶏」に、大崎上島町の柑橘が香るサツマイモのポタージュ。県産や竹原こだわりの食材を使ったフレンチのコースを堪能します。

近藤志保 記者
「竹原産の酒粕を添えた広島サーモンです。いただきます。酒粕の甘みとサーモンの塩味があいまってとってもおいしいです」

外国人参加者
「とってもおいしい。サーモンが大好きで、最高だった」

昼食を終えると「町並み保存地区」の散策です。約1時間かけて、通訳とともに酒蔵やみやげ物店の並ぶ石畳を歩きます。

藤井酒造 藤井善文 社長
「全然知らない方もたくさんまだいらっしゃると思うんですよね、竹原自体の存在を。そういう人に来ていただいて、ここの良さを見ていただき、体験していただけたらいいなと思います。やはり正直に表情が出ますので外国の方は。反応としてはうれしかったです」

地元・竹原でもこのツアーへの期待が高まっています。

竹原市 今栄敏彦 市長
「すごいですね。JR西日本さんにまずはお礼を申し上げたいし、竹原を取り上げていただいたことが我々としても誇りですし、(コロナ禍で)民間事業者の方が毎日毎日暮らしていくのが大変な中で、でもやっと明るい兆しが見えてきたこの時期にこういう企画ができたっていうことはね、生かしていきたいと思います」

旅も終盤。竹原から再び「etSETOra」に乗って三原駅に向かいます。まるで海の上を走っているかのような絶景ポイントでは、撮影タイムとして約1分間停車します。三原駅からは新幹線で広島駅に戻ります。

外国人参加者たち
「印象に残ったのは竹原の街を歩いたこと。歴史が好きです。建築や古い建物に興味を持ちました」
「よかった。日本のいろんな文化を勉強になりました。帰りも同じ電車に乗って酒飲みながらゆっくり話しながら帰るのですごく楽しい」

JR西日本広島支社 地域共生 安藤拓馬 さん
「etSETOraは2020年の秋から運行していまして、当初はインバウンドの方々も想定した内容していたんですけど、コロナもありまして、なかなかご利用は外国の方は伸びなかったという経緯がありまして、広島を詰め込んだ列車にインバウンドの方も乗っていただきたいなという思いで企画させていただきました」

「etSETOra」のインバウンド専用ツアーは、料金は3万円、9月14日から12月28日まで、月3回程度、木曜日に運行します。

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