【韓国】韓・フィリピンがFTA署名[経済] 24年上期発効へ、車産業に恩恵

韓国産業通商資源省は7日、フィリピン政府と自由貿易協定(FTA)に署名したと発表した。早ければ2024年上半期の発効を目指す。発効後は、韓国製自動車の関税率5%が即時撤廃されることから、日本車がシェア首位を誇るフィリピン新車市場の開拓につなげたい考えのようだ。

東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議が開催されたインドネシア首都ジャカルタで、韓国とフィリピンの両政府がFTAに署名した。韓国がFTAを締結するのは世界59カ国・地域、計22件目。ASEANでは◇シンガポール◇ベトナム◇カンボジア◇インドネシア——に次ぐ5カ国目のFTAとなる。

韓国・フィリピンのFTA交渉は19年6月に開始し、関税率などの詳細を固めた22年6月に最終案で妥結していた。

一方、フィリピンは、地域的な包括的経済連携(RCEP)やASEAN自由貿易協定(AFTA)など多国間での貿易協定を結んでいる。2カ国間の貿易協定となれば、08年に発効した日本との経済連携協定(EPA)以来、韓国が2番目となる。

既存のRCEPやAFTAに加え、韓国フィリピンのFTAが発効された場合、韓国はフィリピンの全品目のうち94.8%、フィリピンは韓国の全品目のうち96.5%の関税がそれぞれ撤廃される。

■韓国車の市場開拓本格化か

FTAで最も恩恵を受けるとされるのは韓国の自動車産業だ。

フィリピンは、ガソリンやディーゼルの韓国製の乗用車・商用車に対し、現行5%の関税を即時撤廃する。電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)の電動車については、現行5%の関税を5年にわたって段階的に撤廃していく。自動車部品に関する関税も現行3~30%を5年以内でなくす方針だ。

フィリピンの新車市場は日本車が22年時点でシェア82.5%と、米国車(7.0%)、中国車(6.4%)、韓国車(2.5%)など他国を圧倒している。ただ日本とフィリピンのEPAでは、日本の乗用車に依然として20%の関税がかけられている。韓国車メーカーは、FTAによる関税撤廃で未開拓な市場を開拓する考えだ。

輸出拡大を目指す「Kフード」にも追い風となりそうだ。加工食品5~10%、高麗ニンジン5%、唐辛子5%、ナシ7%、サバ5%など食品類にかかる関税は15年にわたって段階的に撤廃される。韓国の農家に影響が大きい農水産食品や林産物は、RCEPやAFTAの範囲内で関税率が維持される。

■バナナは3割安に

一方、韓国側は、フィリピンの主力産品であるバナナの関税を現行30%から毎年6%ずつ引き下げ、5年以内に完全撤廃する。韓国が輸入するバナナは昨年時点で全体の73%(2億1,000万米ドル=約310億円)がフィリピン産だ。関税がなくなれば、韓国消費者の「体感価格」は現在より30%ほど安くなるという。

韓国産業通商資源省は「ヘルスケアや希少金属(レアメタル)加工、文化産業、電子商取引(EC)など有望戦略分野でも多様な形で協力できるよう議論していく予定だ。国会手続きなど迅速に進めて、来年上半期のFTA発効を実現させたい」とのコメントを発表した。

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