花粉症患者は「果物アレルギー」併発の可能性高い!? ノドかゆみ、まぶた腫れ、重症化も…“発症のメカニズム”とは

スギ、ヒノキ系の花粉症の人は「桃」によるアレルギーに注意!?(Graphs / PIXTA)

特定の食品を口にすることで体に異常が起こる食物アレルギー。卵や牛乳、小麦など原因となる食物が多岐にわたるなかで、意外と知られていないのがモモやリンゴなどの『果物』ではないだろうか。

口や喉に痒みや腫れが起こるのが“果物アレルギー”の主な症状だが、場合によっては重篤な症状が起こるケースもあるという。

実はこの果物アレルギー、大人になってから発症する食物アレルギーの代表格でもあり、その裏には、多くの日本人を悩ませる「花粉症」との深い関係があるという。アレルギー疾患医療の全国的な拠点となっている国立病院機構相模原病院で、臨床研究センターのアレルゲン研究室長を務める福冨友馬医師に話を聞いた。

花粉症と果物アレルギーの関係

人には、侵入してきた細菌などの異物に対して抗体を作って自らを守る免疫という仕組みがある。アレルギーは、この免疫機能が特定の成分(アレルゲン)に過剰に反応することで引き起こされる。

福冨氏によると、あまり関係がなさそうな花粉症と果物アレルギーをつなぐのも、このアレルゲンなのだそうだ。

「花粉症のアレルゲンと構造が酷似した成分が果物にも含まれているために、花粉症の方が果物を食べたときに“交差反応”によって果物アレルギーを起こしてしまうのです。『花粉-食物アレルギー症候群』と呼ばれるもので、大人の果物アレルギーのほとんどすべてが該当します」(福冨氏)

アレルギーを専門とする医師の協力を得て行われた「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」(2020年)では、年齢群別原因食物のうち、初発の原因食物として果物類は7~18歳と18歳以上で3位に入っている。相模原病院のアレルギー外来においても、食物アレルギーのなかで1、2を争うほど多いのが果物アレルギーの患者だという。

一方の花粉症は罹患者が年々増えており、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象に行われた「鼻アレルギーの全国調査」(2019年)では、花粉症の有病率は42.5%にものぼっている。

「日本人の果物アレルギーには、カバノキ科、草(イネ科など) 、ヒノキ科の3タイプの花粉症が関係しています。中でも特に果物アレルギーを併発する可能性が高いのはカバノキ科の花粉症です。日本人にもっとも多いスギを含むヒノキ科の花粉症では、果物アレルギーを併発する人はごく一部に限られます」(同)

花粉症の人が注意するべき果物

3タイプの花粉症はアレルゲンが異なり、注意が必要な果物や症状にも以下のような違いがある。

・カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ)の花粉症
アレルゲン:PR-10
注意するべき果物など:バラ科(モモ、リンゴ、サクランボ、ナシ、プラムなど)、大豆製品

・草(イネ科、ブタクサ、ヨモギ)の花粉症
アレルゲン:プロフィリン
注意するべき果物など:ウリ科(メロン、スイカ、キュウリ)、オレンジ、バナナ、アボカド

・ヒノキ科(スギ、ヒノキ)の花粉症
アレルゲン:GRP
注意するべき果物など:バラ科(モモ、リンゴ、サクランボ、ナシ、プラムなど)、柑橘系、梅干し

「PR-10やプロフィリンの場合、症状は食後に喉がかゆくなるのが大多数です。症状が強い場合は喉や唇が腫れたり、声がかすれたりすることもあります。これらのアレルゲンは消化酵素で壊れやすく、多くの場合で症状が口腔内にとどまります。熱にも弱いので、缶詰など加熱した食品ではアレルギーが起こりにくくなります。

一方で、厄介なのがGRPで、熱や消化酵素で壊れにくいため、加熱しても症状が出ます。瞼や周辺が腫れ上がったり、食後に運動をすることで全身にわたって複数の臓器で症状が出るアナフィラキシーが起こったりと、症状も重くなりがちです」(同)

強い症状が出た場合

福冨氏によると、果物にはもともとアレルギーとは関係なくかゆみを起こす成分も含まれている。そのため、アレルギー外来を受診する人の半分ほどは、アレルギーではないと診断されるそうだ。

アレルギーの有無や原因を突き止めるのは専門医でないと難しいこともあり、症状が重い場合は特に病院で診てもらう必要があるという。

「果物を食べてアナフィラキシーになった方や、痒みだけでなく目に見えて唇が腫れるなど強いアレルギー症状が出た方は、診断を受けて何に反応するのかを特定し、その果物を避けることが必要です。ごく稀ですが、花粉ではなく天然ゴムに含まれる『ラテックス』を原因とした果物アレルギーの可能性もあります。

喉が少し痒くなる程度でしたら、病院に行く必要はないと思いますが、アレルギーはQOL(生活の質)に関わる病気です。症状が軽くても、ご自身が困っていて原因を調べたい場合は受診をおすすめします。

アレルギー疾患対策基本法によって都道府県ごとにアレルギー疾患拠点病院が選定されているので、まずはその病院に相談してみるといいでしょう。拠点病院は日本アレルギー学会が運営するアレルギーポータル(https://allergyportal.jp)というサイトで調べられます」(同)

果物アレルギーは予防できる?

ところで、果物アレルギーの発症自体を防ぐために何か有効な策はないのだろうか。

「発症自体を防ぐためには花粉症を予防することになるため、なかなか策がないのが実情です。アレルギー症状を自覚してから、その果物を避けたり、病院で検査したりするのが一般的な対策になります」(同)

症状が出た場合、軽くて辛くなければ少しはその果物を食べてもかまわないものの、さまざまな理由で症状が強く出ることもあるという。

「同じ果物でも、アレルゲンの量は品種や部位、熟し方などによって異なるため、アレルギーの症状が必ず出るわけではありません。ただ、一度に大量に食べれば、症状は出やすくなります。食べる側の体調も症状を左右します。疲れやストレスが溜まっていると症状が強くなりやすく、解熱鎮痛剤(非ステロイド性の抗炎症薬)を服用している場合も同様です。こうした状況では、アレルギーが出る果物は食べないほうがいいでしょう。

また、花粉症が悪化すれば果物アレルギーの症状も強まります。花粉が大量に飛散している時期は、該当する果物を避けるのが無難です」(同)

夏の終わりから秋にかけては、果物が特に美味しい季節。しかし、ブタクサやヨモギの花粉飛散量が多い時期でもある。花粉症の人は特に、果物アレルギーのことを気に留めてみてはいかがだろうか。

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