【タイ】首相の施政方針、経済回復に向けまず5政策[政治]

タイのセーター首相は11日、国会で施政方針演説を行った。経済回復を重視する方針で、16歳以上の国民へのデジタル通貨1万バーツ(約4万1,200円)の配布や、農家・中小零細企業・個人の債務返済に対する救済措置、電気代・燃料費の引き下げなど5件の政策にまず取り組む。

セーター氏は演説で、回復が遅れているタイ経済の振興と、国民の債務・負担の軽減を最優先する考えを強調した。「緊急を要する」として取り組む5件の政策は(1)デジタル通貨1万バーツの配布(2)農家・中小零細企業・個人の債務返済への救済措置(3)電気代の引き下げと燃料(石油、ガス)価格の合理化(4)歳入増加に向けた観光産業の振興(5)民主化に向けた憲法改正(君主制は改正しない)——となる。

目玉となる1万バーツの配布は、経済活動や消費が活性化され、雇用創出が期待できるほか、政府の税収増加にもつながると説明。デジタル通貨として配布することで、デジタル経済や電子決済のさらなる普及・発展にもつながると述べた。

債務返済への救済では、一定の条件を設けて農業従事者や中小企業に返済猶予を与えるなどの措置を打ち出す。電気代・燃料コストの削減では、再生可能エネルギーの利用も促す。

観光産業の振興ではターゲットとする国を定めて査証(ビザ)費用を無料とするほか、MICE(会議、視察、国際会議、展示会・見本市)参加者を対象とした特別ビザ制度の導入などを目指す。

■最低賃金には触れず

長期的には新たな輸出相手国の開拓や、経済回廊の整備継続、第一次産業の高度化と従事者の所得向上、徴兵制廃止と国軍の規模縮小、ユニバーサル・ヘルスケア・カバレッジ(UC)制度の改善、違法薬物の撲滅などを掲げた。

セーター氏は財界が注目する最低賃金の引き上げや、首都圏鉄道の運賃一律20バーツについては触れなかった。これらの項目が盛り込まれていないことに関しては野党から指摘が上がり、国会で討論が繰り広げられた。

国会ではきょう12日も、施政方針に関する答弁が行われる。

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