会場被害、テントで交付 白山手取川にジオ認定証

認定証を受け取った田村白山市長(中央)=10日、モロッコ・マラケシュ(古府拓也撮影)

  ●モロッコで会議 市長「悲しみ大きい」

 【マラケシュ=古府拓也】国連教育科学文化機関(ユネスコ)は10日、モロッコのマラケシュで開いた国際会議の閉会式で、白山市全域をエリアとする白山手取川ジオパークに世界ジオの認定証を交付した。9日朝に発生したマグニチュード(M)6.8の地震を受けて会場が一部崩落。田村敏和市長は急きょ敷地内の別の場所で行われることになった異例の交付式に臨み、認定への感謝と地震の犠牲者に対する哀悼の意を示した。

 交付式後、田村市長は「ジオをふるさと学習に生かし、地元をさらに盛り上げたい」と語り、認定を機に地域に根付いた文化の磨き上げに一層力を注ぐ考えを示した。

  ●山田氏の遺影と

 白山市にとって、世界ジオは13年越しの悲願であり、今年3月に急逝した山田憲昭前市長が旗振り役となって認定に向けた取り組みを進めてきた経緯がある。田村市長は山田前市長の遺影を持って式に出席し、「山田市長が生きていれば、どんなに喜んでいたか。われわれが遺志を継いでふるさとを盛り上げていく」と決意を述べた。

 ただ、喜びは控えめだった。現地では既に2千人を超える死者が確認されており、「悲しみの方が大きい。ご冥福をお祈りしたい」と話した。

 国際会議の会場となった建物は地震で一部が崩れたため、交付式は屋外に張ったテントで行われた。冒頭で出席者が地震で命を落とした人たちに黙とうを捧げ、ユネスコ世界ジオパークネットワークのクリスティン・ラングネス氏が田村市長に認定証を手渡した。

  ●「牛首紬」アピール

 国際会議の閉幕後に開かれたパーティーで、田村市長ら白山市の訪問団は石川県指定無形文化財「牛首紬」の着物姿で登場し、伝統の絹織物をアピールした。

 世界ジオ認定は、日本国内では2018年の伊豆半島(静岡)以来、10カ所目となった。

  ●「備蓄品を現地に」帰国の市長が方針

 田村市長は11日夜、羽田空港に帰国した。訪問団には池元勝同市議会副議長、東大地域未来社会連携研究機構北陸サテライト「ライン館」(白山市白峰)の坂本貴啓特任助教らが参加した。

 田村市長はモロッコが地震の被害を受けたことに関し「支援物資として、市の備蓄品を現地に送れないか検討したい」と述べた。小松空港で記者団の取材に応じた。

© 株式会社北國新聞社