自転車の事故防止へ、児童ら「想像力」養う 京都のサイクリング拠点施設が取り組み

中島さん(左から2人目)とのどかな道を走りながら、交通安全を学ぶ児童=京都府南丹市美山町島

 京都府南丹市美山町のサイクリング拠点施設「サイクルシーズ」が地元の小中学生にロードバイクを貸し、町内を走りながら安全運転を学んでもらう取り組みを続けている。専用コースでルールを覚える一般的な教室より実践的で、指導者は「事故防止のベストな判断をする感覚を養えている」と手応えを語る。

 同施設は7年前、全国で自転車教室やレースをしてきた同町の中島隆章さん(60)が開設。新型コロナウイルス禍で遠方の活動が減った2020年、レジャー控えで退屈する地元の子ども向けの取り組みを本格化させた。

 交通量や大きな起伏の少ない同町は自転車で走りやすい上、保護者の送迎なく遊ぶためにも人気で、出入りする子どもは数十人に上る。中島さんと走ったり、子どもだけで乗ったりしている。

 ブレーキの使い方や複数人で走るときの合図などを教えた後は、公道を走る。8月上旬の朝には、美山小学校6年の男子児童(11)が中島さんと共に快走。「美山は広いので飽きない。なるべく左に寄るけれど、路肩の溝に注意している」と慣れた様子でこいでいた。

 自転車教室は小学校に警察官を招く場合が多い。中島さんは成果を認めつつ、限界を指摘。見通しの悪い道路の横断、信号無視の車への警戒などを例に「事故防止にはルールの順守に加え、判断力がいる。公道での体験から想像力を養う必要がある」と訴える。

 スタッフが何人も同伴して丁寧に教える民間の教室もあるが、美山では子どもだけで走ることも多い。経験の長い児童が初心者に教えるなど、自発性を重んじる。別の6年の男子児童(12)は「自分で考えるので、気をつけることが頭に入りやすい」と楽しんでいる。

 中島さんは「交通量の少ない環境ゆえに、子どもの考える能力を生かせている。他の中山間地にも広がってほしい」と期待する。

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