技術や運営、介護者が交流して学び合う「寺子屋」京都・京丹波の施設が開設

「かいごの寺子屋」で移乗介護の実践練習をする参加者と指導役の稲葉さん(右奥)=京都府京丹波町富田・くろまめさんシェアハウス

 京都府京丹波町富田の介護施設「くろまめさん」が、介護に携わる人向けの研修会「かいごの寺子屋」を始めた。現場での疲れや悩みを同町の自然の中でリフレッシュしてもらいつつ、介護技術や施設運営のノウハウを学ぶことができる。中には1週間の「留学」を希望する参加者もいるといい、「やる気のある人のモチベーションを上げるきっかけになってほしい」と期待する。

 くろまめさんは2009年、デイサービス「ひだまり」を前身としてスタート。農作業や昼食作りをスタッフと高齢者が共に行うなど、ユニークな施設運営で知られる。寺子屋は、介護従事者がリフレッシュしながら学ぶ機会をつくろうと企画した。

 6月の初回には、近畿圏を中心に関東や九州などから計13人が参加した。2日間の日程で、初日は古民家を改装した施設や黒豆畑の見学、野菜収穫体験のあと、介護技術の勉強会を行った。翌日は参加者同士それぞれの職場での体験談などを語り合い「良い介護とは何か」について考えた。

 介護技術の勉強会では、代表の稲葉耕太さん(39)が床に座った男性を片膝に乗せて持ち上げる技術を実演。「正しい姿勢で支えれば、体格差があっても移動できます」と説明すると、驚きの声が上がった。参加者も同じ動きを実践し、はじめは苦戦していた人もいたが、互いにアドバイスをしながらコツをつかんでいった。

 違う施設で働く介護従事者が顔を合わせる機会は多くないといい、参加者で兵庫県西宮市で訪問介護に取り組む東洋子さん(55)=大阪府吹田市=は「同じ目標を持った同業の人たちと一緒に学べるのはとても貴重な機会」と話す。

 熊本市の作業療法士中村由香さん(29)はくろまめさんの運営スタイルに興味を持ち、滞在を1週間延長した。「高齢者目線とスタッフ同士の密なコミュニケーションが大切だと身に染みて感じた。持ち帰って実践したい」と抱負を語った。

 寺子屋は月1回ほどのペースで開催している。稲葉さんは「地道な取り組みを通じて、介護従事者も仕事を楽しみ、やりがいを感じている様子を知ってほしい」としている。

© 株式会社京都新聞社