「農業がなくなってしまう」農家の悲鳴 資材の高騰… 新規就農にも影響 県議会でも議論へ

収穫の秋なのに喜びは半分…。農業資材の高騰に、農家の悲鳴が聞こえて来ます。このままでは広島県内の農業はなくなってしまう。県議会が実態把握に動き始めました。

庄原市東城町の山本農園です。収穫の秋を迎え、コシヒカリを収穫しています。ロシアによるウクライナ侵攻で、化学肥料の価格が高騰するなか、農園では使用量を減らす工夫をしています。そこへコンバインのガソリン代の高騰です。

山本農園 山本一守 代表
「1割以上はきっと高くなってると思います。コメの値段がだいたい1袋(30キロ)あたり400円アップして、まあまあと言うが、肥料代とか資材代が高くなっているので、なかなか厳しいと思います」

なかでも影響を受けているのが野菜のハウスです。新たに建てることが難しくなったのです。

山本一守 代表
「一番問題なのは鉄骨。5割から7割アップしている。うちに来ていた研修生が資材費高騰のために、就農して開業する状態ではないと今、断念しているところです」

ミニトマトはもうかるそうです。高齢化で農家が減るなか、若い後継者を確保する期待もふくらんでいましたが、資材高騰に水を差された形です。

農家の切実な声を県議会議員に

この日、山本さんは地元の県会議員を訪ねました。小林秀矩 県議は、県議会農林水産委員会の委員です。国は、食料の安定供給の確保などを柱に、農業の基本法の見直しを進めていて、委員会でも近く勉強会を開きます。その提案者が小林県議です。

山本さんは、「資材の価格が上がってますから、新規就農者が就農しづらい状態です」と訴えます。さらに、根本的な問題も語りました。

山本一守 代表
「今までのやり方でダメなんです。農家が年をとっていくばかりで、入って来る若い子が少ない。農業は、魅力的な産業では残念ながらない状況になってるんだと思います。だったらある程度、魅力的な産業にしないと。全ての議員に知ってほしい。農家の方に足を運んでほしいなと思います」

山本さんの訴えに、小林県議は─。

小林秀矩 県議
「こういう時期に何をすればいいかということ、他人事じゃないんだと。国にしても県にしても、ちゃんとやってくれと、真剣な議論と結論があって然るべきと私は思っている」

この日、小林県議が話を聞いた農家は3組。庄原市の一木営農集団は、かつて集落営農のモデルでしたが、高齢化の進展で消滅の危機にありました。

小林議員
「今の状態で、あと何年くらい続ける?」

一木営農集団 藤光有 組合長
「5年が精一杯でしょうね」

特に資材高騰の影響が大きいのが酪農です。エサの配合飼料が、ほぼ100%輸入だからです。県酪農業協同組合では県内産のエサを増やすなどして対応にあたっています。

しかし、一番の対策は牛乳を作る過程を消費者に知ってもらう食農教育だといいます。エサ代の高騰を受けて去年11月牛乳の価格を上げて以降、消費者の買い控えに遭っているからです。

広島県農業協同組合 西中晃 専務理事
「国民の合意、消費者の合意というものが欠けていると今、思っています。牛乳酪農だけじゃなく、農業全般、そこは共通項ですから」

県議会農林水産委員会は、14日に勉強会を開き、国の動向をにらみながら県内の農業が直面する課題解決に向けた議論をスタートします。

小林県議は、「国会でも議員の間で『このままでは農業がダメになる』という危機感が高まっている」とし、「今回の基本法の見直しは、広島県の農業を立て直すチャンス」と話していました。

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