閉鎖迫る日本製鉄・呉地区

「日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区」は、2023年9月末までにすべての設備の稼働を停止します。72年の歴史を持つ製鉄所を退職する人は、1100人に達します。ある元従業員の今を取材しました。

呉市の商店街にほど近い場所にあるお好み焼き店…。岡峰さん夫婦が営む店は、常連たちで賑わっていました。夫の忠司さんは、前身の日新製鋼から38年にわたり勤務しましたが、閉鎖を待たず2年前に退職しました。

■岡峰忠司さん

「まさか閉鎖という話が現実になるとは思わなかった転勤も考えたけど残された家族がいるということで呉に留まることにしました」

2020年2月、突然発表された製鉄所の閉鎖方針…。協力会社を含め、3000人以上いた従業員は、先月時点で半数以下になりました。従業員とその家族を含め、呉市への影響は計り知れません。

「生活のためには、前に進むしかない」。そんな思いで、今年1月に始めたのが、このお好み焼き店です。

■岡峰忠司さん

「(開店に)不安もありましたよ本当に夫婦げんかも結構したしサラリーマンからねいざ飲食業をやるのは初めてなので」

お好み焼き店の開業は、妻の早苗さんの長年の夢。経営を忠司さんが担い、調理は早苗さんが担当します。そして店に立った今感じるのは。

■岡峰早苗さん

「きのうも日鉄の方が来られて(製鉄所を)壊す前には見たいと言ってましたよ更地になると思うとみんなさみしいんじゃないですか」

■岡峰忠司さん

「いろんな仲間とわいわい言えるような店にしたいと思ったんですけどね1年後2年後先でもやってよかったと言えるといいんですけどね」

日本製鉄呉地区は、8月24日までに鉄製品の加工・製造を終了。現在残された従業員が、出荷作業にあたっています。そして離職したおよそ1100人のうちの9割が、再就職を決めたとしています。

■日本製鉄・瀬戸内製鉄所

今居武士所長「この呉の地で培った技術を絶やすことなくほかの製鉄所でも必ずその技術は生かせると思っているきっちり継承していきたい」

製鉄所は2023年10月以降、本格的な解体工事に入りますが、工期は10年程度を想定。跡地については、具体的な利用策を示していません。退職を決断し、新たな道を歩もうとする人々と、72年の歴史に幕を下ろそうとする製鉄所を抱える、呉市の今です。

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