長崎県内各地から風評、次世代への影響懸念 核ごみ促進請願採択 地域分断嘆く声も

 長崎県の対馬市議会で12日、「核のごみ」文献調査受け入れを促進する請願が採択された。県内各地からは風評被害や次世代への影響を懸念する意見のほか、地域の分断を嘆く声が聞かれた。
 「海でつながっている(隣の)壱岐市にも(最終処分場の)安全性などを十分説明してほしい。風評被害が心配だ」。こう話すのは壱岐の勝本町漁協組合長、大久保照享さん(77)。「対馬は国境の島でもあり韓国にも十分な配慮が必要」とくぎを刺した。
 県平和運動センター被爆連副議長で被爆者の川副忠子さん(79)=長崎市=は「対馬の地下に核のごみが埋められることになれば、被爆地の人間としては困る」と不快感を示す。佐世保市の無職、田中賢治さん(74)も「(請願の理由になっている)人口減少は(根本的な)問題を解決しなければ、調査受け入れで最大20億円をもらっても意味がない」と指摘した。
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)に近い松浦市の会社員、大石素子さん(40)は子ども3人の母親。「原発がそばにあるので他人事ではない。(最終処分場は)安全だと耳にするが、子どもたちの代まで影響を及ぼすかもしれないと考えると…」と不安を隠さない。
 島原青年会議所前理事長、湯川尚美さん(39)は「島原半島も過疎化が進んでいるので、地域振興につなげたいという推進側の思いは分かる。一方、私は0歳児の親でもあるので将来に影響する判断を今の世代がして良いのかという葛藤もある。(最終処分場誘致に)イエスともノーとも言えない立場だが、地域が分断されることが何より悲しい」と話した。

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