核ごみ文献調査 対馬市議会が促進の請願採択 市長、27日までに意見表明 長崎県

高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場選定の文献調査受け入れ促進を求める請願を賛成多数で採択した対馬市議会の本会議=市議会議場

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を巡り、対馬市議会(定数19)は12日開会した定例会本会議で、受け入れ促進を求める請願を賛成多数で採択した。賛成10人、反対8人で僅差の決着となった。受け入れの是非を最終的に判断する比田勝尚喜市長は本会議の休憩中、「(27日までの)今議会中に私としての意見は述べたい」と明言。近く記者会見を開き、考えを表明する見通し。
 初村久藏議長は取材に「賛否の議員どちらも、対馬のことを思っての考えに変わりはない。あとは市長の賢明な判断に委ねたい」と述べた。大石賢吾知事は「県としては引き続き動向を注視していく」とするコメントを発表した。

 文献調査を巡っては、賛否などの立場から市内の11団体が6月、計8件の請願を市議会に提出。このうち建設4団体は急速に進む人口減少や経済衰退を背景に調査受け入れ促進を求め、市商工会は議論検討を市議会に要望した。一部漁協や市民団体、水産団体などは調査受け入れによる風評被害や処分場の安全性を懸念し、反対を訴えていた。
 市議会は6月、議長を除く18人で特別委員会を設置し、請願団体の代表者や有識者らを招いて審査。8月16日、建設団体と市商工会の請願2件を賛成多数で採択し、反対の請願6件はいずれも不採択とした。
 9月12日の本会議では、特別委の船越洋一委員長が審査結果を報告し、文献調査受け入れの有無にとどまらず、最終処分場誘致までを視野に入れた採決であることを確認。討論では「現状の行政運営では人口減少を食い止められない」として市に調査受け入れを求める意見や、「一部の業界団体の意見だけで推進せず、幅広い意見を聞くべきだ」として、反対の意見などが上がった。採決の結果は特別委と同様だった。

 文献調査は3段階ある選定調査の第1段階で、市町村が応募するか、国からの申し入れを受諾すれば始まる。比田勝市長は2020年の市長選で処分場は誘致しない旨を発言。これまでの市議会や定例会見の場でも、調査に慎重な姿勢を示している。
 文献調査の期間は2年程度。資料を基に地質や活断層などを確認する。受け入れた自治体などには国が最大20億円を交付。20年11月に北海道寿都町と神恵内村で始まって以来、調査を受け入れた自治体はない。対馬市では以前にも最終処分場誘致の議論が表面化したが、市議会は07年に誘致反対を決議している。

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