「奇跡の鳥居」に顕彰碑 300年前に大洪水で流出、氏子が戻す 世知原・山口神社

設置した「奇跡の鳥居」の顕彰碑を紹介する久村さん=佐世保市、山口神社

 長崎県佐世保市世知原町の山口神社に約300年にわたり置かれたままになっていた鳥居の一部があった。江戸時代の大洪水で流出し、氏子が発見、戻したもので、佐世保市文化財審査委員会委員長の久村貞男さん(76)はこれを「奇跡の鳥居」と名付け、顕彰する石碑を建てた。
 この鳥居は1700年前後に建立されたと考えられている。同神社などによると、1718年の大洪水で社殿と共に流されてしまったが、氏子が鎮守大明神(現山口神社)から約3キロ下流で鳥居の一部を発見し、境内に戻された。構造上、鳥居は地震や暴風雨などの自然災害で倒壊しやすいが、久村さんは「洪水で倒壊し、流出した後に発見されて神社に戻されることは珍しい」と話す。
 約50年前から鳥居の一部のことを知っていた久村さん。今年3月に自費出版した「肥前の鳥居-肥前鳥居等の発生と展開-」を執筆する中で、鳥居の一部が戻ったのが珍しいことを再確認し、書籍出版を記念して「奇跡の鳥居」の顕彰碑を建てたいと考えるように。昨年12月頃、同神社の吉福悦久宮司(56)の承諾を得て、設置するに至った。
 鳥居の一部は鳥居最上部「笠島(かさしま)木」の端部分で長さ約120センチ。顕彰碑は高さ約170センチ、幅約130センチ。鳥居の一部を上部に設置している。8月11日に奉納祭と除幕式を開いた。
 吉福宮司は「戻してくれた氏子の、敬神の念の深さを感じた。石碑はありがたいの一言に尽きる」と感謝した。久村さんは「顕彰碑は肥前鳥居の研究の成果が具現化したようなものなので感慨深い。奇跡の鳥居がいかに貴重な遺物かを多くの人に知ってもらいたい」と話した。

© 株式会社長崎新聞社