社説:給食停止の波紋 事業者の苦境にも目を

 新学期の生徒らに思いがけない困惑が広がっている。早く安心を取り戻せるよう努めてほしい。

 全国で150施設の学校や寮の給食を手がける食堂運営会社「ホーユー」(広島市)が9月以降、約半数で事業を停止した。

 食事の提供を受けられなくなった学校などでは、急きょ弁当を手配したり、総菜を買い集めたりして対応に追われた。

 委託していた京都府立高の一部をはじめ、少なくとも19府県の48施設に影響が出たという。

 高騰が続く食材費や、採用難から給食関連の経営環境が悪化したのが原因だ。同社は破産手続きに入った。

 生徒らの学校生活を支え、心身を育む「食」の土台のもろさを浮き彫りにしたといえよう。

 ホーユーは、西日本を中心に公立高校の給食や福祉施設、警察学校などの食堂を運営し、従業員はパートを含め約580人に上る。資金繰りの悪化で給与支払いにも滞りがあるといい、突然の提供停止が波紋を広げた。

 南丹市の府立農芸高では5日から寮の調理員が出勤せず、教職員がパンや弁当を手配し、比較的近くの生徒に自宅通学を促した。

 他府県でも代わりの食事や別の担い手の確保を急ぐが、業者の少ない過疎地域では容易でない。また、支援学校などでは飲み込みやすい食事などの個別配慮が必要で、切り替えが難しいという。

 多くの利用者を顧みず、委託側への十分な説明や代替措置もなく投げ出した形で、事業者の責任は重い。少なくとも業務の円滑な引き継ぎや、現場スタッフの雇用継続に力を尽くすべきだ。

 同時に、事業行き詰まりを同社が「原材料や人件費の高騰が重なったが、価格転嫁など施設側との調整ができなかった」と弁明した背景も直視する必要がある。

 東京商工リサーチによると、物価高や人手不足が響き、全国の給食事業者217社の約2割が直近決算で赤字に陥り、中小企業ほど厳しい。

 学校や公的施設の給食は自治体などの入札で決まり、材料費が上振れしても業者が負担をかぶることが多いようだ。

 京都市などの学校給食でも安い食材に代え、デザート抜きにするなど苦心しているという。現場の努力で補うにも限界があろう。

 栄養バランスなど内容面からも事業者任せにするのでなく、自治体などがコスト変動や事業の継続性に目配りし、柔軟に支援策を講じていくことも求められる。

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