心の病 患者集まり支え合う 「だんだん」の会(青森・弘前市)

仲間と交流する大切さを語る(左から)古川さん、熊木さん、田中さん=8日、弘前市の障がい者生活支援センター「すみれ」

 精神疾患がある人たちが、同じ病気の仲間を支え、励まし合うピアサポーター団体が青森県弘前市で活動している。「少しずつ心を打ち明けられる。だんだん元気になる」との思いを込めて名付けられた「だんだん」の会だ。かつて生きづらさを感じ、自ら命を絶つことも考えたメンバーらが、ミーティングなどで体験を明かし、生きる大切さを語っている。

 同会は2018年、弘前保健所が主催した「精神障がい者ピアサポーター養成研修」に参加した患者らが中心となって19年に結成した。メンバーは、弘前愛成会病院、藤代健生病院(弘前市)などの医療機関に通院・入院する統合失調症、うつ病、不眠症などの精神疾患がある人約20人。

 2カ月に1回、同市内でピアミーティングを開き、近況を報告しているほか、県内の入院患者や医療スタッフを対象に、自身の体験や思いを語る場を設けている。

 精神疾患がある人同士が、医療機関の枠を超えて支え合うピアサポートの取り組みは県内で珍しいという。

 6月、弘前市で開かれた「あおもりいのちの電話」の相談員養成講座では、メンバーの一人が、生きる望みを失い、命を絶とうとしたが、周囲の人に助けられた経験を語り「自分で自分を裁く選択をしないでください」と呼びかけた。

 7月、同市のヒロロで開かれたピアミーティングでは参加者から、有名タレントが自殺した事例を受けて「なんで命を絶ってしまうのか」「命は大切に」との声が出された。

 事務局となっている障がい者生活支援センター「すみれ」(同市)の川村和康所長は「メンバーは自身の体験や思いを発表することで自信をつけている。自己肯定感が強くなっているようだ。会の活動は生きがいとなり、精神疾患から回復する力になっている」と話した。

メンバー「仲間がいれば、心軽く」

 弘前市の精神疾患ピアサポーター「だんだん」の会のメンバー3人が、東奥日報のインタビューに応じ、「仲間がいれば、心が軽くなる」と語った。

 熊木章人(ふみひと)さん(41)=弘前市=は10年前、交際していた女性と疎遠になったことで精神状態が不安定になった。大量に睡眠薬を飲み、救急搬送され、弘前愛成会病院に入院。双極性障害(そううつ病)と診断された。

 入院中、孤独感に苦しんだが、同じ心の病がある人と徐々に打ち解け、仲間の大切さを知った。4年前、「だんだん」の会発足にも携わり、今は会の中心的な役割を果たす。「心の病で苦しんでいる人はいっぱいいる。弱っている人の力になりたい。自分もかつて孤独に苦しんだ」と言葉を強めた。

 同市の古川裕也さん(30)は高校生の時、受験のプレッシャーで不眠や幻聴、食欲不振に悩まされ、藤代健生病院に入院した。最初は心を閉ざしていたが、医療スタッフの心遣いに救われ、心が落ち着くように。退院後も精神疾患の当事者同士の集まりに参加するなどしてきた。「人は、人と交わることで不思議と心の回復を遂げることが分かった。人生の新しい道を見つけることができた」としっかりとした口調で語った。

 熊木さんと古川さんは現在、障がい者生活支援センター「すみれ」のピアサポータースタッフとして働く。

 田中清美さん(55)=神奈川県出身、弘前市在住=は30歳を過ぎて、眠れなくなり入退院を繰り返した。疾患名は統合失調症。一時期、パニック状態になり、行動が制限されることもあった。

 市内の障害者施設で生活し働く中で、生きがいを感じるようになった。「だんだん」の会の活動は「楽しいし、やりがいがある」という。「精神疾患がある人の外出をお手伝いしたい。自分も以前、自由に外に出たかったから」と笑顔を見せた。

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