社説:岸田再改造内閣 何がしたいのか見えぬ

 岸田文雄首相は第2次内閣を再改造し、新たな自民党役員体制とともにスタートさせた。

 官房長官や財務相など6閣僚が留任し、骨格はほぼ維持した。自民人事でも幹事長や政調会長を続投させ、派閥幹部で固めた。

 昨夏の参院選後に内閣を改造したが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との密接な関係や失言などで4閣僚が相次ぎ辞任したほか、マイナンバーを巡る混乱拡大で支持率が低迷している。

 岸田氏は人事を機に政権浮揚を図り、衆院の解散総選挙をうかがいたいようだが、刷新感は乏しい。

 目立つのは東京電力福島第1原子力発電所の処理水を「汚染水」と発言した野村哲郎農相を差し替え、女性閣僚を過去最多に並ぶ5人としたことだろう。

 11人が初入閣したものの、女性3人の登用を除くと、あとは各派閥の「入閣待機組」から選んだのがあからさまだ。

 党内第4派閥を足場とする岸田氏にとって、政権安定を最優先したのだろうが、あまりに主体性を欠いた人事と言わざるを得ない。何がしたい政権なのか。相変わらず、はっきり見えてこない。

 中でも疑問なのが、河野太郎デジタル相と高市早苗経済安全保障相の留任である。

 河野氏はマイナンバーカードと健康保険証の一本化を突如打ち出し、カード取得拡大を強引に進めてきた。個人情報の誤登録などトラブルが続くと、事態の矮小(わいしょう)化や責任転嫁の発言を重ねた。

 高市氏は放送法の「政治的公平」を巡る文書について、総務省が認めた後も「捏造(ねつぞう)だ」と強弁し、責任逃れに終始した。

 留任にあたり、もっと誠実に問題に向き合うよう岸田氏が指示した形跡もないようだ。国民の不信感に無頓着なのだろうか。

 政治資金収支報告書の虚偽記載発覚で、逃げるように閣僚を辞任した小渕優子氏の党選対委員長への起用。旧統一教会の施設に再三訪れていた萩生田光一氏の政調会長留任。一部週刊誌で妻の元夫の死亡に関して捜査に圧力をかけた疑いを報じられながら、口をつぐむ木原誠二官房副長官の交代―。

 いずれも岸田氏と本人に、徹底した説明を求めたい。

 岸田氏はきのう、2年の歩みを「道半ば」とし、「経済、社会、外交・安全保障を柱に、変化を力にする内閣だ」と語った。選挙目当ての弥縫(びほう)策を慎み、就任時の初心に戻って、格差是正と財政健全化にこそ向き合うべきだろう。

© 株式会社京都新聞社