30代半ばで出産。夫は5歳年上「教育費や住宅ローン返済にお金は足りますか?」年の差夫婦の家計事情

8歳と5歳の子を持つAさん(44歳)。普通預金にある資金で、最近よく耳にするNISAやiDeCoでの資産形成についても相談したいとファイナンシャルプランナーの筆者のもとに相談に来られました。また、30代半ばで出産されており、夫の年齢も5歳年上(49歳)なので、住宅ローンや今後の教育費についても心配されているとのことでした。さらにAさんはパートで仕事をされていたが、シフト制で就業時間が夜までになることもあり、子育てとの両立が難しく最近退職されました。また働きに出るつもりだが、ご自身の今後のパートは収入がどれくらいあれば安心した生活をしていけるか聞きたいとのこと。こちらのご家庭の家計状況と今後の対策についてみてきましょう。


最近までパート勤務をしていましたが、勤務時間が夜遅くなることもあり、子育てとの両立が難しく退職しました。今後、子供の教育費や住宅ローンの返済は、自分が働かなくてもまかなっていけるのかが心配です。大切な子どもたちのために今からできる対策はどんなものがあるのでしょうか?

【相談者プロフィール】

性別:女性

年齢:44歳

職業:無職

家族構成:夫(49歳)、8歳(小学校2年生)と5歳(年長)の子2人

夫の職業:会社員

住居:戸建ての持ち家。住宅ローンあり。

【収入】手取り収入合計:年間約424万円

毎月の世帯の手取り収入の金額:手取り額月28万円

世帯の手取りボーナスの金額:手取り額年64万円

その他の収入:子ども手当 月2万円(1万円×2人)

【毎月の世帯の支出額の目安】

生活費合計:月34万5千円。年間約414万円。

(内訳)

住居費:8万円(住宅ローン。夫が79歳で完済)

食費:7万円

日用品:1万円

水道光熱費:3万円

通信費:2万円

子どもの習い事代:2万円

下の子の保育代:3万円

契約者Aさん(妻)投資型年金保険:3万円

(70歳まで28年間払込み。70歳から85歳まで毎年120万円受取。但し、年リターン約7%の運用実績が出た場合)

(車輛費)

自動車ローン:3万5千円(5年間で返済)

ガソリン代:1万円

自動車保険:1万円

【世帯の資産状況】

普通預金:400万円

(既契約保険)

夫名義:120万円(一時払い。60歳から70歳まで毎年20万円受取。但し、13年間運用し、年リターン約13%の運用実績が出た場合。)

夫名義:180万円(一時払い。55歳から65歳まで毎年30万円受取。但し、13年間運用し、年リターン約13%の運用実績が出た場合。)

Aさん(妻)名義:150万円(一時払い。60歳から70歳まで毎年30万円受取。但し、18年間運用し、年リターン約11%の運用実績が出た場合。)

※上記リターンは保険証券より転記したもので、将来の運用実績により変わる可能性があります。

月額3万円(月払い。70歳まで28年間払込み。70歳から85歳まで毎年120万円受取。但し、年リターン約7%の運用実績が出た場合。)

【ご希望】

NISAやiDeCoを活用した資産形成をしたい。

子供の教育費が足りるのか知りたい。

老後の資金準備は足りているのか、足りない場合どうしたらいいのか知りたい。

パートを退職したが、これから働きに出るときにどれくらいの資金が必要か知りたい。

相談者の方の現状をもとに、家計状況と今後についてみていきましょう。

上の子が大学進学をする10年後、貯蓄がなくなり家計収支が赤字に転じる

今の収入状況が続く場合、家計の毎年の収支は、10年後の夫59歳、妻54歳から夫75歳・妻70歳までの27年間マイナスが続きます。そして、上のお子さんが大学に進学する10年後、家計の貯蓄が底をつきます。

投資型の保険を複数契約して老後資金を準備されており、夫60歳・妻55歳から年金支払いがスタートしますが、家計のトータル収支は夫83歳、妻78歳の23年間ずっとマイナスです。このままでは住宅ローンの返済が滞り、家を失うことになりかねません。また、お子さんのやりたいことをサポートすることもできなくなります。そのため、まずは10年後を目途に黒字化できる家計に改善していく必要があります。

妻はできるだけ早くパートを見つけ収入をつくっていく

最近までAさんがパート勤務されていた職場はシフト制で夜の勤務もあり、小さいお子さんを抱えるご家庭の働き方には合っていないとのことで退職されました。将来の家計の赤字を回避するために、Aさんはご主人の扶養の範囲内でパートを探しましょう。月8万円(年収96万円)であれば、住民税や所得税も引かれることなく働くことが可能です。Aさんが収入を得るだけで家計の収支は大幅に改善され、毎年の家計収支も黒字に転じます。

夫は65歳で退職予定とのことですが、健康で働ける状態であればできるだけ長く働きましょう。仮に、夫が退職後の66歳から70歳まで月5万円の収入を得た場合、運用なしの預貯金のみでも、夫70歳・Aさん65歳の時には約1,600万円の貯蓄ができる家計になっています。最近では嘱託などで働ける機会も増えていますから、老後資金を見据えてペースは落としながらもできるだけ長く働くことが大切です。

NISAで投資をはじめ、住宅ローンの繰り上げ返済に充てる

Aさんに収入があることで余裕資金が産まれ、NISAなどを活用した資産運用のできる家計になります。すでに400万円の預貯金がありますので生活防衛費の準備は十分です。

Aさん名義で月5万円の積立て投資を60歳までしたとします。年利5%での運用成果が出た場合、16年間の投資期間で積立額1,020万円に対して1,602万円の投資成果を得ることができます。その結果、夫65歳、妻60歳時に1,763万円の資産形成が可能となります。積立て投資をせず預貯金のままであれば、同年齢時の資産は1,200万円となり、約500万円の差が出てきます。

そして、積立て投資をすることで夫が退職する65歳時に、住宅ローンの繰り上げ返済が全額可能となります。夫が65歳時の住宅ローンの残債1,375万円全額を返済したとしても、預貯金で約770万円が残ります。

投資型年金保険を解約し、iDeCoを始めるのも手

現在、Aさん名義で月3万円の投資型個人年金保険をご契約されています。しかし、現在Aさんは無職。さらに夫の扶養内で働かれるのであれば所得税と住民税の支払い義務は生じません。

個人年金保険の場合、所得税と住民税を支払っていれば個人年金保険料控除が適用でき税金還付を受けることが可能です。Aさん名義の保険の場合、現状であればそのメリットを享受できていません。

投資型個人年金の証券を見る限り、かなり高いリターンを想定しての年金額が記載されているようです。投資効率という視点と、節税という視点から考えるとiDeCoの活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

その理由として個人型確定拠出年金であるiDeCoも、個人年金保険同様に拠出額に対して全額所得控除の対象となり所得税と住民税を控除することが可能です。すでに投資型年金保険は夫とAさん名義で合計450万円の契約をされています。iDeCoであれば、投資型年金保険よりも年間の運用コストを低く抑えることも可能です。

会社員である夫の上限額である月額2万3千円(年利5%)のiDeCoを49歳から65歳でされた場合。金融資産は投資型年金保険を契約したままと比較すると、夫65歳・Aさん60歳時で約180万円。夫95歳・妻90歳時で約220万円の差が生じるので、iDeCoに変更されるメリットは十分にあるでしょう。

夫がもしもの時の必要保障額を準備しておく

夫に万一のことがあった時の必要保障額が現状では3,000万円となります。下のお子さんが大学を卒業する約18年間は世帯主の万が一に備えて、掛け捨ての保険などを契約されることをおススメします。健康状態にもよりますが月1万円ほどの掛捨て保険であれば、Aさんが働いて収入を得ることで十分支払い可能となります

どこに課題があり、どんな方法で家計改善するか

相談内容に対してファイナンシャルプランナーが改善案を提案した後、Aさんはとても安堵された様子でした。

Aさん「夫は年上で、子供たちもまだ小さいのでお金のことが不安でした。でも、私が以前のようにパートに出て、働くことで家計の状況が良くなると聞けて安心しました。今までは夜も忙しく働いていたけれど、ちょうど近所で希望の勤務時間で、やりがいのある仕事を見つけることができました。私もパートで働きながらこれからはもっと自分の好きなことに時間も使っていきます。」とのお言葉を頂きました。

Aさんの様に資産形成に保険を活用されている方も多いと思いますが、効率や節税という視点から眺めてみるとまた違った選択肢が見えてくるかもしれません。

夫婦ともになるべく収入を得て、それを効率的な運用に回し、教育費や住宅ローンというライフイベントに備えていく方法は、年の差カップルだけでなく全ての世帯にメリットがあるといえるでしょう。

お金のことで不安になるのは「今」の状況しか知らないから。将来にわたってどこに課題があり、どう対策すればいいのか知ることで家計状況は大幅に改善します。ぜひ、早い段階で家計全体の現在から将来にわたっての状況をチェックし、行動に繋げましょう。

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