幼いわが子が事故に…救急車が来るまでどう対処 救急隊員が乳幼児の心肺蘇生法レクチャー

0~2歳児の人工呼吸の方法を学ぶ参加者=9月6日、福井県の勝山市子育て支援センター「カンガルーのお部屋」

 わが子が目の前で事故に遭ったりけがをしたりしたとき、救急車が到着するまでの数分間どう対処したらいいのか―。福井県勝山市の子育て支援センターでこのほど、乳幼児の救急法を学ぶ講座が行われ、市内の子育てママたちが心肺蘇生法などを学んだ。体が小さい乳幼児は力加減や方法など救命処置が大人と異なる。かけがえのない命を守るため、必要な知識として知っておくことが大事だ。

▼目を離さない

 勝山市の子育て支援センター「カンガルーのお部屋」。9月6日に開かれた0~2歳児の救急法を学ぶ講座には、生後半年から1歳半ほどの子どもと親11組が集まった。

 「お風呂で溺れて意識がないとか、ものを食べて窒息して意識がないときはまず、足の裏をたたいて反応を見てください。反応がなかったらすぐに119番通報をしてください」

 講師を務めた勝山市消防署救急救助係の鈴木聡さん(49)が、人形を使って子どもに対する心肺蘇生法を実演した。

 心肺蘇生の手順は、まずは胸骨圧迫。子どもの胸の真ん中からやや下側の部分を「指2本」で押す。深さは体の厚さの3分の1ほどで、これを30回繰り返す。この後、人工呼吸へ。子どもの場合は鼻と口を覆った状態で2回空気を入れる。入れる空気の量は軽く胸が上がる程度にするのがポイントだ。これを何度も繰り返す。

 鈴木さんは「子どもは静かに溺れる。お風呂では絶対に目を離さないでほしい」とアドバイスした。

▼背中強くたたく

 誤嚥(ごえん)が起きたときの対処法について鈴木さんは「やみくもに口の中に指を突っ込んでも物が取れる可能性は少ない」と強調。▽頭を下にして背中をそれなりに強くたたく▽せきをしている間は完全に詰まってないので見守ってあげる―と呼びかけた。

 宇田佳奈さん(31)は2歳の次女と参加。「子どもが氷をのどに詰まらせてパニックになったことがあった。(訓練を)やったことがあるのとないのとでは違う。今回学んだことがとっさのときに生きてくると思う」と話していた。

⇒福井県の育児・子育てのニュース一覧はこちら

▼到着まで9.4分

 厚労省の「人口動態調査」によると、2016~20年の子どもの死亡事故の原因で、風呂などでの溺水(できすい)や誤嚥による窒息といった「不慮の事故」が、病気を含む全ての死因の中で上位を占めている。

 また総務省発表の21年「救急・救助の現況」によると、救急車の現場到着にかかる時間は全国平均で約9.4分だった。

 心肺停止の人に対する応急手当てがある場合は、なかった場合に比べ、病院収容前の心拍再開率や1カ月生存率が上昇するというデータもあり、救急車が来るまでの間に適切な対応ができるかどうかが、命に関わるといえる。

 鈴木さんは「とにかく事故が起きたらすぐに対応することが大事。子どもの事故は親が気を張ってればほとんど予防できる」と話していた。

© 株式会社福井新聞社