女性社長が61万2,224人、初めて60万人を超える「女性人口10万人当たり」の社長数 近畿がトップ

~ 第12回「全国女性社長」調査 ~

2023年の全国の女性社長は61万2,224人(前年比4.8%増)で、初めて60万人を超えた。全社長数の14.96%(前年14.70%)を占め、前年から0.26ポイント上昇した。
調査を開始した2010年(21万2,153人)から13年間で約3倍(188.5%増)に増え、緩やかながらも女性の社会進出が前に進んでいることがわかった。
政府や自治体が推進する創業支援など、女性の活躍推進の取り組みが結実している。ただ、女性社長数の増加は起業だけでなく、同族経営で高齢の代表者から妻や娘への事業承継も背景にあるとみられる。

女性目線での商品開発や新たな市場開拓などを通じて、経済活性化につながることが女性社長には期待されている。政府は6月5日、男女共同参画会議で示した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」で、女性起業家を10年で20%まで引き上げる目標を掲げた。ただ、男女の役割分担に対する先入観から、家事や育児など女性の社会進出を阻む要因は未だ蔓延っている。そのためにも創業や事業承継の支援と併せて、社会意識をどこまで変えられるか本気度が問われている。

※本調査は、東京商工リサーチの保有する約400万社の経営者情報(個人企業を含む)から、女性社長(病院、生協などの理事長を含む)を抽出し、分析した。調査は今回が12回目(前回2022年11月7日発表)。


「女性人口10万人当たり」の社長数は東京が2年連続で2,000人超え続く

都道府県別の女性社長数は、最多は東京都の15万5,210人(前年15万1,314人)。以下、大阪府5万9,655人(同5万5,987人)、神奈川県3万9,434人(同3万7,029人)、愛知県3万1,512人(同3万840人)、福岡県2万6,597人(同2万5,358人)と続き、人口の多い大都市が上位を占めた。
一方、最少は島根県で1,697人(同1,661人)。次いで、鳥取県2,158人(同2,067人)の順で、山陰の2県が並んだ。次いで、福井県が2,235人(同2,138人)だった。
2023年1月1日現在の住民基本台帳人口に基づいた、都道府県別の女性人口10万人あたりの女性社長数は、最多が東京都の2,203人で、2年連続で2,000人を超えた。次いで、大阪府が1,309人で、前年2位の沖縄県1,308人を僅差で抜いた。一方、最少は新潟県453人、次いで、秋田県479人、山形県480人、島根県497人の4県は500人を下回った。人口が多く、市場の大きな大都市圏は、女性社長が起業しやすいサービス業を中心に独立を夢見る女性を惹きつけているようだ。

女性社長率は14.96%、上昇ペースは緩やかに

「女性社長率」(全社長数に対する女性社長数の割合)は14.96%で、前年(14.70%)から0.26ポイント上昇した。緩やかではあるが、毎年上昇を続けている。都道府県別では、飲食業などに女性社長が多い沖縄県が20.58%(前年20.62%)で、唯一20%を超えた。以下、東京都16.98%(同16.76%)、茨城県16.77%(同16.06%)の順。一方、新潟県9.40%(同9.32%)、山形県9.68%(同9.45%)のワースト2県が10%を割り込んだ。

地区別 「女性社長率」トップは近畿

地区別の「女性社長率」ランキングは、9地区すべて前年と同順位。トップは近畿の15.88%(前年15.54%)。以下、2位の関東15.71%(同15.44%)、3位の九州15.55%(同15.41%)までが15%を超えた。
上昇幅は、中国(4位、14.52%)がトップで0.39ポイント上昇した。次いで、東北(8位、11.99%)が0.35ポイント上昇で続く。一方、上昇率の最小は、北海道(5位、13.50%)で、0.04ポイント上昇(前年13.46%)にとどまった。
「女性人口10万人当たり」の女性社長数は、最多が関東の1,195人(同1,133人)。次いで、近畿が1,008人(同940人)で続き、近畿は初めて1,000人台に達した。以下、九州863人(同822人)、中国775人(同726人)、四国738人(同713人)、北海道737人(同705人)、中部733人(同704人)、北陸656人(同618人)、東北588人(同544人)の順。
関東は最も多い東京都が前年比2.5%増にとどまったのに対し、近畿の2府4県は平均5.4%増と堅調に推移し、女性社長率トップを維持した。

産業別 「サービス業他」が初の30万人超えで女性社長数トップ

産業別で女性社長が最も多かったのは、「サービス業他」の30万840人。初めて30万人を超え、全体のほぼ半分(構成比49.1%)を占めた。喫茶店や食堂などの飲食業、美容業やエステティック業など、女性が活躍しやすく、小資本でも起業が可能な業種が中心だった。
次いで、不動産業が9万995人(同14.8%)で初の9万人台。3位は小売業6万3,691人(同10.4%)の順。
産業別の「女性社長率」は、トップは不動産業の24.82%(前年24.48%)。次いで、サービス業他が18.85%(同18.53%)で続く。このほか、小売業15.49 %(同15.51%)、情報通信業13.25%(同12.71%)が続き、7産業で10%を超えた。
一方、女性社長率が一桁台にとどまったのは、建設業5.35%(同5.33%)、農・林・漁・鉱業8.03%(同8.06%)、運輸業9.20%(同9.07%)の3産業だった。

女性社長の名前は「和子」が12回連続トップ

女性社長の名前は、1位が「和子」の6,184人だった。次いで、2位が「幸子」の5,745人、3位が「洋子」の5,575人、4位が「裕子」4,877人、5位が「陽子」の4,236人だった。
「和子」がトップの背景には、昭和初期から昭和27(1952)年頃まで生まれ年別の名前で最も多かった影響が伺われる。「幸子」「洋子」なども人気が高かった。
名前が「子」で終わる社長は30万5,943人(構成比49.9%)で、ほぼ半数を占める。一方、「子」以外では18位の「明美」(2,647人)や21位の「真由美」(2,381人)など、「美」で終わる社長が5万6,410人(構成比9.2%)いるが、1割にも満たない。

出身大学別 日本大学がトップ、上位10校の顔ぶれは変わらないが女子大に鈍化傾向

女性社長の出身大学は、日本大学が480人(前年458人)でトップ。次いで、2位が慶応義塾大学393人(同375人)、3位には前年4位の早稲田大学334人(同312人)が浮上、東京女子医科大学316人(同317人)と順位が入れ替わった。5位は前年と同じく青山学院大学242人(同237人)で、6位には前年7位の同志社大学190人(同180人)が日本女子大学187人(前年同数)と入れ替わった。共立女子大学(14→16位)も順位を下げており、女子大に鈍化傾向がみられた。
国公立大学は、8位の東京大学(184人)、14位の広島大学(131人)、18位の大阪大学(127人)、20位の九州大学(124人)が上位20校に入った。
医科歯科系では、3位の東京女子医科大学のほか、13位に日本歯科大学(144人)、24位に東京医科歯科大学の3校が、前年と同じく上位30校に入った。

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