【MLB】 心筋炎を克服した有望株 キースタッドがメジャーデビューへ

写真:デビューを飾ったキースタッド

2020年のドラフト全体2位、ヘストン・キースタッドが現地14日のレイズ戦でメジャーデビューを果たした。

ドラフトから3年後でのデビューは決して遅いものではない。しかし、キースタッドにとってその3年間は他の有望株にも増して、試練に満ちた期間であったに違いない。

強豪アーカンソー大の主砲だったキースタッドは、全体2位でオリオールズにドラフト指名を受ける。大学屈指の強打者だったものの、当時はオースティン・マーティン(ヴァンダービルト大)らを差し置いての指名には驚きの声も多かった。これはオリオールズの上位で契約金を節約して下位指名に分散する戦略で、実際、オリオールズはトップピック以降でジョーダン・ウエストバーグやコビー・マヨといった金の卵を確保することに成功している。

予想外の高評価でのプロ入り、しかしその喜びは束の間だった。ドラフト直後にキースタッドは新型コロナウイルス由来の心筋炎を発症してしまったのだ。

バットを振ることはおろか、腹筋や腕立て伏せすらもできない何もない日々。何か新しい趣味を見つけようとしても、それに心動かされることはなかった。キースタッドの頭の中にあるのは野球のことだけだった。「やりたいことは野球だけだった。だけどそれができなかった。他のことでは満足できなかった」キースタッドは『ボルティモア・サン』の取材にそう答えている。

心筋炎が長引き、復帰目前にハムストリングに故障を負い、キースタッドがフィールドに戻ったときにはドラフトイヤーから丸2年が経過していた。

実戦から丸2年離れたブランクは軽いものではなく、キースタッドは2022年のA+での43試合で打率.233と低迷した。カンを取り戻すべく、キースタッドは球団からのアリゾナ・フォール・リーグ(AFL)参加の打診にすぐに飛びついた。(AFLはシーズン終了後に行われるリーグで、有望株の登竜門と言われることも)

キースタッドはAFLで見事にタイミングを取り戻し、多くの有望株が参加する中でリーグMVPに輝く。この好成績を受けてAAから開幕した今季もキースタッドの勢いは止まらず。AAとAAAで122試合、21本塁打、打率.303、OPS.904の好成績を残し、メジャー昇格を勝ち取った。

キースタッドはプレーできなかった期間を通して成長を感じている。「精神的にも今回のことで多くのことを経験したし、自分のプレーにも強みが出てきたと思う。今は何事に対しても違った見方ができるし、ゲームをプレーすること、健康であること、そしてただ毎日好きなことをできることにもっと感謝できるようになった」

オリオールズは今日からレイズとの天王山4連戦がスタート。キースタッドがデビューした初戦は惜しくも1点差負け、キースタッドもキャリア初打席は三振に終わった。これでレイズはオリオールズに1ゲーム差に迫っている。キースタッドの打棒はオリオールズの地区優勝を後押しできるだろうか。

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