幸せのかぎしっぽ♡わが家にやってきたのは黒いハチャメチャな天使で…

幸せの黒い子猫

コロナ禍に一大決心

「猫を飼いたい」ずっと願っていた夢がかなったのは忘れもしない3年前、4月のことでした。

ちょうどコロナウィルスが猛威を振るい始め、子供たちの学校も職場もステイホームを余儀なくされたのをきっかけに、「今なら子猫のお世話ができる」と保護猫を引き取ることを決意したのです。

保護猫施設に連絡すると、繁殖期ということもあり、ミルクボランティアさんの元で待機している子猫たちが何匹かいるとのことでした。そのうちの1匹と面談の日にちを決めました。

その子は目も明かないうちに兄弟と共に捨てられ、保護されなければそのまま天国に行ってしまったかもしれない子でした。

早くその子に会いたい、わたしの気持ちは昂りました。そして、わたしの気持ちを一層昂らせたのが「クロネコちゃんよ」という保護猫カフェのスタッフの人の言葉でした。

縁の巡り合わせ

待ちに待った面談の日。わたし同様ずっと猫を飼いたいと思っていた娘と息子を連れ、保護猫カフェを訪れました。そこへミルクボランティアさんのお家から一時外出してきた子猫がやってきました。

スタッフさんの腕に抱かれたふわふわなその子は、子猫特有の好奇心で下に置かれるや否や元気に走り出しました。せわしなくにおいを嗅ぎ、わくわくしたようにしっぽをぴんと上に伸ばして…それを見た時、わたしはこの子の家族になりたいと思いました。

25年前のある日、母が黒猫を拾ってきて飼うことになりました。人懐っこくてお茶目でいつもわたしたちを笑わせてくれるその子は、チャーミングなかぎしっぽを持っていました。それはまさに「幸せのかぎしっぽ」でした。

しかし、ある朝突然原因不明の心臓発作でこの世を去ってしまったのです。まだ1歳にもならない子でした。

目の前の子猫のぴんと上を向いたしっぽは、あの子と同じかぎしっぽ。運命とか一目惚れとかそういう言葉は嫌いだけれど、この子を幸せにしたいと強く思いました。

問題児にてんやわんや

1週間の待期期間、2週間のトライアルを経て、晴れて正式に家族になった子猫。家族会議でシンバ(新波と書きます)と命名され、とにかくはちゃめちゃだったけど、みんなの視線を釘付けにするかけがえのない存在になりました。

初めはあまりいい顔をしなかった義父や旦那もすっかり虜になり、シンバは甘やかされ放題。そして驚くべき問題児へと化していきました。

問題行動その1:腹いせにおしっこ

一番の厄介ごとは、自分の要求が通らないときにわざとおしっこをすること。

シンバは夜中だろうが明け方だろうがかまってほしい時は、寝ているわたしたち(おもにわたし)を起こしにきました。眠いので無視しているとなんと布団の上におしっこをするという問題行動に。

これには参ってしまいました。しかし怒るわけにもいきません。無視されると不安になってしまうのかも、と思い直し、シンバが起こしにきたらできる限り相手をするようにしました。

1年ぐらいでおさまりましたがこの時はかなり悩みました。

問題行動その2:おさかなくわえたどらねこ?!

シンバはとにかく食いしん坊。子猫の時は特にひどく、家族の目を盗んではわたしたちの食事を狙い、キッチンの鍋の中を狙い、隠してあるおやつを狙い、ちょっとした隙にお皿のおかずをくわえて逃げることがしばしばありました。

人間の食べ物は猫には毒。それでもまさか鍋の蓋までは開けないだろうと高を括っていたら、上手に蓋を開けておでんのちくわをぱくっ!

そこでわたしに見つかり、「シンバ!」の声でびっくりして、ちくわをくわえたままあっちに逃げ、こっちに逃げ…。床は汁だらけになるは、シンバはパニックになって家具と家具の間入り込んで出てこないは、大騒動になってしまいました。

問題行動その3:ダメにされた洋服は数知れず…異食行動

シンバは毛布やタオルをちゅっちゅっと吸う癖がありました。吸いながらふみふみするので、初めは「お母さんを思い出して甘えているんだな。」と微笑ましく見ていました。

ところがある日、シンバが吸ったタオルをよくよく見てみると丸い穴が開いているではありませんか。また違う日に取り込んだ洗濯物をたたんでいると、Tシャツやタンクトップに同じような丸い穴が。

シンバは吸っているうちに、どういうわけかこれらを食べてしまっていたのです。さらにジョイントマットにも食べた形跡が。そしてある時大事件が発生してしまいました。

異食の果ての緊急手術

前の日から兆候はありました。あの食いしん坊のシンバがなんとご飯を残したのです。

それだけではありません。普段はツンデレで滅多に膝の上に乗ってきたりしないのに、その時はどういうわけか膝に乗りたがって、膝に乗るや否や安心したように寝入ってしまいました。

そして朝。ご飯を食べた直後に嘔吐。ぐったりしている姿にこれはもうただ事ではないと病院に救急搬送し、今の状態と普段から異食をよくすることを伝えました。「詰まっているかも」という先生の言葉通り、レントゲンの写真には案の定、腸に何か引っかかっている様子が。

緊急開腹手術が行われ、摘出されたのはあのジョイントマットのかけら。それが引っかかってしまったことで、あわや腸が壊死してしまうかもしれない事態を引き起こしたのです。

あと少し連れて行くのが遅ければ死んでしまったかもしれない。異食することはわかっていたはずなのに止めることができず、シンバに苦しい思いをさせてしまった。後悔先に立たず、ジョイントマットを捨てながら、わたしはシンバがもしいなくなってしまったら、と怖くてたまらなくて涙が止まりませんでした。

幸い術後の経過は良好で、シンバは先生がびっくりするくらいの食欲を見せ、通常の入院期間よりだいぶ早く退院できました。

「異食する子は度々それを繰り返し、何度も病院に運び込まれることがある。そして吐き出させるにしても、開腹するにしても体に与えるダメージの大きさは計り知れない。」と先生からこんこんと説明され、改めて一つの命を育てる責任の重さを痛感しました。

ますます俺様モード

現在3歳になったシンバは、ますます俺様一番の雰囲気を醸し出しています。

相変わらず食べることは大好きですが、何でもかんでもとりあえず口に入れるということはなくなりました。異食は、というと以前よりは軽減したものの、要観察状態です。

布団におしっこをすることはなくなりましたが、夜中や明け方にわたしを起こしに来る習慣は継続中。勘弁してくれ、と思いながらちょっと心待ちにしている自分もいて…。

先に歩くシンバの上に伸びたかぎしっぽを見つめながら、毎晩幸せを噛みしめています。

© 株式会社ピーネストジャパン